【アメリカ進出の第一歩】海外市場調査・現地調査チェックリスト

国内・海外問わずビジネスを展開していく上で欠かせない市場調査。特にこれから海外展開を検討している企業様にとっては、市場調査は国内でのビジネスよりも慎重に行わなければならないプロセスの一つだと思います。しかし、海外進出のための市場調査と言っても「いったい何から始めれば良いのか」そんな疑問を持っている経営者の方も多いのではないでしょうか。

以前、「海外進出(アメリカ進出)のプロセス」についてご紹介させていただきました。その中の項目の一つに現地調査のステップがあったのですが、現地調査は、アメリカ進出に限らず、海外進出をご検討中の企業にとって、やはり避けては通れないプロセスだと思います。

そこで今回は海外進出を検討している経営者様に向けて、「市場調査・現地調査チェックリスト」と題し、海外進出のための市場調査・現地調査の必要性や目的、方法など、市場調査・現地調査の概要をご紹介させていただきます。

海外市場調査・現地調査の基本情報

①海外市場調査とは?

市場調査とは、企業がもつ課題を解決したり、マーケティング戦略を構築するために、価格・広告・競合製品の特徴などに関する情報を、市場や消費者、ターゲットとなる顧客から収集し、分析する調査のことです。市場調査の事例としては、ブランド調査、認知度・満足度、販促調査などがあります。市場調査の種類としては、ネットリサーチ(アンケート)、会場調査、ホームユーステスト、郵送調査、インタビュー(個別、グループ、オンライン)等があり、市場調査の目的は、価格調査、満足度調査、ブランドイメージ調査、販促調査、商品開発調査等があります。

現地調査とは、建築や研究だけでなく、ビジネスの幅広い業界で行われている調査です。実際に現地に足を運び、事前に調べた情報の正誤を直に確認したり、現地の商習慣、生活の様子を観察したり、現地コーディネーターと共に必要なデータを収集することを指します。領事館を訪れたり、現地パートナーを面接し、契約を交わす機会としても活用されます。

②海外市場調査の必要性

海外進出を検討している企業の目的は、大きく分けて二つあると言われています。それは、新規市場・販路拡大生産コストの削減(人件費だけでなく、素材・部品・製品の現地調達含む)です。

その目的を達成するために行うのが市場調査(現地調査)です。海外進出を目的とした市場調査(現地調査)の具体例として、そもそも進出を検討している場所に市場(需要)はあるのか、どのような製品を展開をすべきか等、各地の産業構造などのマクロ的な視点と、潜在的顧客や競合企業などのミクロ的な視点での調査等があり、現地でのリアルな情報を踏まえた海外進出戦略を練ることに活用されます。優れた機能や他にはないサービスを提供していたとしても、それを求める市場が進出予定国にない場合、海外進出によるビジネス機会の創出はありません。自分たちはどの市場で勝負をするのか、その決定のカギを握るのが「市場調査・現地調査」であると言えます。

また現地調査を行うことによって、インターネットや民間調査会社から得たデータの再確認、また知ることのできない情報や、より生の現地データを得ることができます。 また頻繁に変化する対象について、現在の状態を把握するといったことが可能です。

海外市場では、国内市場以上に潜在顧客の嗜好や競合他社の調査が大切です。海外では、現地の文化や歴史的なこと、色やデザインでイメージする感覚的なこと、法律や規則等も調査する必要もあります。そういった点から、海外進出を自社だけで行うことは稀で、パートナー企業や取引会社と共同して行うケースも多くあります。現地調査では、そのようなパートナー企業や現地取引会社候補を選定しておき、ミーティングの機会を持つことが大変有効です。面識を持った上で、別途相手企業の能力や資金力を調査し、大きな損失の回避や撤退リスクを低減を図ります。

また、現地調査を行う場合には、事前に収集した情報から仮説を立てておき、自社の製品・サービスの現地需要を見極め、仮説と結果を比較した上で、ビジネスプランに役立ててください。大切なことは、判断は他社(他者)ではなく、自分自身であること。インターネットや民間調査会社の情報を鵜呑みにすることは避けましょう。

より専門的な調査として、フィージビリティ・スタディ(F/S)があります。フィージビリティ・スタディ(FS)とは、企業化可能性調査、事業化調査とも呼ばれ、企業が新規ビジネスへの進出、事業拡大、設備投資等を行う際に実施するものです。民間企業の場合、事業の採算性評価などが主な目的で、技術的及び経済的な両面から調査が実施されます。採算性では投資額、プロジェクトの内部収益率(IRR)、投下資本利益率(ROI)などが検討され、公共事業の場合は、道路、空港、ダム等のインフラ事業の実現可能性の検討を政策の妥当性、設備・操業予算の面から検討されます。PDCAシステム(Plan、Do、Check、Act)のCのステージに行われる調査です。

海外市場調査の項目(チェックリスト)

市場調査の項目①現地の市場規模・市場特性・流通事情・成長率

まず、海外進出する事業・製品・サービスの市場規模の分析を行います。進出を考えている国・地域の自社製品(もしくは類似する他社製品)・製品カテゴリ市場規模と日本国内市場を比較、類似製品・カテゴリの市場規模を比較することで、大体の市場規模、立ち位置(ポジショニング)、競合他者との競争率などを判断することができます。それらの結果によって、仮売上予測を立てることも可能です。

市場特性や流通事情、商習慣に関することは、現地の領事館やジェトロ事業所に問い合わせると、関連する情報提供が得られるかもしれません。

その他、国民総所得やGDP成長率の推移、人口の増加予測等も考慮します。BRICs(Brazil/ブラジル、Russia/ロシア、India/インド、China/中国、South Africa/南アフリカの頭文字)は、地下資源に恵まれ、今後経済発展が予想されている5か国です。その他、東南アジア市場も成長率の点で注目されています。2022年時点では、コロナ終焉の不透明さ、ロシアのウクライナ侵攻、歴史的な円安傾向など、経済環境の変化が激しいため、常に最新の情報を収集することが必要です。

例えば、メーカーが市場規模を調査する場合、製品の価格帯別の市場規模、現地顧客の所得水準、自社製品と同じ価格帯の他社製品の売れ行き、などは調査項目に入るかと思います。

加工業の市場規模を調査する場合は、納入先が販売する最終材が、現地市場での成長見込みを調査する必要があります。その項目には、納入先の移転の可能性や工場停止の可能性なども含まれます。

市場調査の項目②現地顧客の需要

次に、現地顧客(ユーザー)のニーズを分析します。日本と同じ商品やサービスを提供する場合でも、海外は文化や習慣が違うので、想定しているユーザー層と実際のターゲットが異なることがあります。参入するカテゴリや類似品が、どのような使い方をされていて、どのようなニーズがあるのか分析することで、マーケティング(販売方法や訴求方法)を検証します。

また、需要が見込まれる場合でも、参入の余地があるかどうか検証する必要もあります。

事業・製品・サービスによって顧客は異なりますが、その国の顧客が何を求めているか、何を理由に購入を決定するのか、など調査する必要があります。具体的には、顧客の購買決定する理由、購入意思の決定者、購入ルートの調査です。このような情報になるとマクロ情報とは異なり、インターネットで調べて分かるものではないので、実際に顧客となる対象者から情報を収集しなくてはなりません。商品やサービスのターゲット、日系向けかローカル向けか、対象とする所得者層など、ターゲットはモノやサービスによって異なるため、事前に調査対象を明確に設定することが求められます。

自社の製品・技術を購入してくれる「取引先候補のリスト」を作成しましょう。この潜在顧客のリストは、進出後数年の売上計画を立てる上でも、営業候補先も決める上でも重要な役割を果たします。この際の調査方法としては、オンライン調査等の手法を用いるのが効率的です。

一例として、製造業が潜在顧客リストを作成するときには「日系の潜在取引先」に加えて「他国からの外資企業」「地場企業」を確認しておく必要があります。加えて、現地の同業他社の流通経路(例:部品、原材料の調達方法)も併せて確認しておくと、競合のビジネスモデルを理解するときに役立ちます。

市場調査の項目③同業・競合他社

次に、競合他社を分析します。競合他社の売上高・販売ネットワーク・生産体制・組織構成・取引先の状況などを把握することで、自社の立ち位置や顧客にどのように販売していくのか戦略を立てることに役立ちます。さらに競合企業が販売している商品ラインナップや販売方法を把握することで、予定していたターゲットとのギャップを確認することだけでなく、調査対象者を決定するための作業効率もアップします。

情報収集項目
・現地業界の地場有力企業=提供する付加価値、収益を得る仕組み
・以前から進出している外資企業、日系企業の現地法人=提供する付加価値、収益を得る仕組み
・現地で成功している企業=品質、価格、納期
・現地企業、現地外資企業=製品の品質、価格、納期
・現地業界の特徴=生産規模が最低どのくらい必要か、自社が他社に対して保持する優位性は何か
・業界組合=業界組合があるか、ある場合はどのような活動を行なっているか
・地場企業と外資企業の関係性=対立構造があるか、ある場合の要因は何か、宗教的な製品に関する基準や観点は関係するか

市場調査の項目④法律関連(外資政策・法規制・税制・労務・賃金・労働関係法規制)

進出国・地域の法律・規制・商慣習について調査します。同じ国だとしても、地域によって法律・規制・商慣習が異なり、原材料や成分が規制対象になることがあります。例えばアメリカであれば州別、中国であれば台湾や香港というように、国全体の情報を把握することも必要ですが、販売や進出する地域というように対象エリアを絞って、さらに詳細に確認しなければなりません。

自国の事業を守るため、東南アジアでは外資規制を敷いている国が多く存在します。単独での参入が難しい場合や、単独で参入できても資本金規制が設けられている場合もあり、進出にあたり選択肢の検証が必要です。また、国によっては外資企業が土地を取得できない場合もありますので、自身の業種、業態に関する規制は、最新情報を確認しなくてはなりません。現地で行うビジネスが許認可・ライセンスの対象事業に該当する場合も同様に事前に調査をし、ライセンス取得までの期間をも含めた進出スケジュールを立ててください。

その他、原材料や商品を他国から輸入する際には、それに係る輸入関税も重要事項です。アジアでは、法令や制度の改定が高い頻度で行われる傾向にあります。加えて、制度と実務とでは取扱いが異なることも多々あるため、法令を鵜呑みにせず、実務上どうなっているかも併せて調査することが必要です。

現地調査では、アポイント先からのヒアリングを中心に、現地でしか得られない情報を収集します。事前に用意した質問に対する回答を集める方法が効果的です。アポイント候補先の例として、現地の公的機関、金融機関、既に進出している企業を訪問先の候補とすることも考えられます。自社が現地で予定している事業内容に関する意見、国内で収集した情報の確認の確認を行います。現地で新しい情報を収集することは、国内で得た情報が正しいのかを現地で確認する作業と同様に重要であると言えます。

市場調査の項目⑤現地パートナー・取引先候補を対面で確認

現地のパートナー企業と直に面識を持つことです。規制や法律に関しては現地の弁護士、国際税に強い税理士、メーカー、物流、仕入先、取引先などパートナーが必要となります。現地にあるパートナー企業だから全て良いわけではなく、国際業務が可能で責任感のあるビジネスパートナーと巡りあうことが成功へのカギへと繋がります。競合企業がパートナー企業候補へ転じる機会も少なくありません。マーケットの把握、競合分析、法規制調査を経て、最善の進出方法を検討した結果、合弁事業を選択する際には、次のステップとしてパートナー選定のための調査を行うこととなります。

パートナー企業選定は、時間と労力をかけてパートナーを絞り込む、大変重要な作業です。まずは対象の候補先をリスト化するために、候補先の条件を設定します。その後、事業エリア、事業規模、取扱い製品やサービス、株主構成等を調べ、候補先リストの絞込みを行い、可能性のある企業と面談していく流れとなります。

・仕入先
進出候補国内において自社製品製造のための原材料や部品の供給元があるかを調べます。

特に注意して調べることとして、以下のような項目が挙げられます。

・原料に天然資源が含まれる場合
供給業者が公社など政府機関や国営企業であったり、国の規制や慣行から取り扱いができる業者が限られていないか(外資企業が直接調達できるかどうかも調べる)

・原材料の供給が進出先以外の国からの輸入になる場合
直接費用(例:関税、輸送代金)と間接費用(例:材料や製品の在庫維持費)を考慮し、コストが合うかどうか

・現地の日本企業から新規に部品を調達する場合
安定的に部品を調達してくれるのか

・新規参入の壁
進出先の市場に自社が新たに参入する場合の参入障壁の高さを調べます。参入障壁は低ければ低いほど良いわけではありません。なぜなら参入障壁が高いことは、自社の競合先が追いかけて参入してくる際の障壁も高いことを意味するためです。参入障壁の例としては、以下のようなものが挙げられます。

・進出先の国内の業界規制(例:会社設立は可能でも、現地での営業権が与えられない場合)
・一定の設備投資が進出の条件となる場合
・販売ルートの確立に費用と労力がかかる場合
・現地の有力企業がすでに競合と提携を結んでいる場合(例:現地の有力企業と提携を結ぶことを考慮している場合)
この中でも、1つ目の「進出先の国内の業界規制」は国内での調査が困難であるため、現地の同業者へのヒアリング、もしくは専門家への調査依頼が必要になります。

また、2つ目の「一定の設備投資が進出の条件となる場合」は、進出の際だけではなく、撤退の際も障壁になることを念頭に置く必要があります。

市場調査の項目⑥駐在員の住環境(政治・経済・社会情勢)

現地の情報(政治情勢等)は、インターネットでもある程度分かるようになりましたが、カメラには映っていない日常を、現地調査の際に直接目にしておくことは大変重要です。慣れない場所で駐在員の方に負荷がかかるのはやむを得ません。その中で、海外進出をどうしても成功させたいという思いも経営者の方にはあります。現地の生活水準や安全性、現地領事館の確認や万が一のサポート体制など整えておきたいのは、経営者様の共通の願いかと思います。

日本のような安全性やインフラが、外国でも担保されていることはほとんどありません。とは言え、どの国・地域を選んだとしても予期せぬ事態の可能性は0%になることはなく、最後には社運を賭ける決断を迫られます。北米に在住していて思うことは、報道等では銃社会で大変危険なイメージがあり、政治に関しても極端に意見の分かれているように見えるアメリカでも、実際の日常生活では日本と同じく穏やかな毎日です。

海外現地調査の方法

市場調査の方法①自社分析/インターネット調査

2022年現在、市場調査はインターネットである程度の情報収集をすることができます。現地の言語で検索をすれば、より詳しい情報に辿り着くこともできます。情報の信ぴょう性には注意を払う必要がありますが、有料情報なども活用し、効率的に有用な情報を入手することが可能です。

現地調査を自社で行う場合、コストは安く抑えられますが、現地コーディネーターは準備された方が良いのではないかと思います。さらに自社の強みや弱み、方向性などを理解した上でしっかり調査すれば、現地の声をダイレクトにビジネス戦略へと繋げることが可能です。しかし調査項目や調査方法を明確にしていないと、時間とコストを無駄にしてしまうこともあるので注意が必要です。

市場調査の方法②海外進出を支援する関連機関の利用

海外進出を支援する公的な支援機関を利用する方法です。支援機関にはジェトロ(日本貿易振興機構)中小企業基盤整備機構、商工会・商工会議所、政府系金融機関、地方自治体等があります。市場調査や法制度・商習慣などの情報と合わせて、販売先・提携先の紹介やマーケティング支援なども行っているので、調査内容やコスト等自社に合った機関を選択すると良いでしょう。

市場調査の方法③民間調査会社を利用

海外展開を支援する民間の調査会社を利用する方法です。国・地域、業界、専門性、調査方法、実績など調査会社によって強みは異なります。調査会社の選び方は実績経験が多いということだけでなく、進出先の文化や歴史について深く知識や理解があるのかが重要となります。また国内・国外の調査会社、日本語・現地語での調査報告、調査手法、データ解析等があるので、予算に合わせて確認しましょう。

市場調査の方法④ネットワーク活用・現地在住者にオンラインで依頼

進出する国・地域に住んでいる外国人に現地店舗や商品の写真撮影や情報を提供してもらうことや、アンケートを取る方法です。現地に住んでいるので簡単に情報が手に入り、インターネットで依頼や報告をすることでコストを大きく抑えることができます。以前は難しかった方法ですが、2022年現在は、オンラインマーケットプレイスでエリアを絞り、プロファイルやレビューを確認して依頼できることから、もし社内に慣れた人材がいれば、こちらは大変有効ではないかと思います。

自社調査ツール(一例

ジェトロ JETRO 海外進出 調査レポート

Kompass社が提供するデータベースです。世界の主要企業の概要を検索できます。

トーマスネット 北米の製造企業および卸売業者の企業情報を検索

Thomas Publishing Companyが提供するデータベースです。北米の製造企業および卸売業者の企業情報を検索できます。

調査レポート@ジェトロ(JETRO)

ジェトロ JETRO 海外進出 調査レポート

ジェトロ(日本貿易振興機構)は2003年に設立された独立行政法人です。 海外74カ所、国内48カ所のネットワークをフルに活用し、海外ビジネス情報の提供、中堅・中小企業等の海外展開を支援しています。ーウェブサイトより

ジェトロウェブサイト内には調査レポートページがあり、多岐に渡る信頼できる情報が提供されています。キーワード検索だけでなく、国・地域別、目的別、産業別に検索することが可能で、市場調査の力強い味方です。また、「海外ミニ調査サービス」として有料で個別の相談にも応じています。海外進出をご検討中の方は、ぜひお問い合わせください。

アメリカ進出ならミシガン州経済開発公社にお任せください

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