【アメリカ進出計画】日本企業が競争優位性を持つための戦略的アプローチ

アメリカ進出に限らず、新規事業を行う場合、まず計画を立てることが重要です。資金調達のために投資を募ったり、金融機関への説明が必要な場合には、ビジネスプランのような、より詳細な資料の準備が必要となります。戦略・計画立案のメリットは、下記のような項目が考えられます。

・市場の理解
・目標設定と計画の策定
・リソースの最適化
・リスクマネジメント
・チームビルディング

どんなに事前に検証しても、実際に計画通りに進むかどうかは、進出してみないことには分からないことが多くあります。どんなに条件が整ったとしても、決して成功を保証するものではありませんが、不要なリスクを低減するメリットはあるかと考えられます。

そこで今回は、日本企業が海外で競争優位性を持つための戦略的アプローチと題し、アメリカ市場で成功するためにどのような戦略が考えられるか検討してみます。

なお、アメリカ進出のプロセスについては過去のブログにてご説明していますので、合わせてご確認ください。

アメリカ進出の戦略的アプローチ

独自の技術や製品の提供

多くの日本企業は、独自の高度な技術や製品を持っていますが、日本でのニーズのある製品が、そのままアメリカ市場で受け入れられるとは限りません。現地企業が既に大部分のマーケットシェアを獲得しているケースもありますし、他国の同業他社もアメリカ市場へ進出しています。

そのためアメリカ市場に進出する場合、まず相手のニーズを汲み取ることが必要です。その上で自社の独自性をアピールしましょう。御社の製品・サービスが、クライアントにベネフィットをもたらすもの(価格的優位性、リスクの低減、アフターサービス、フリートライアル、時間短縮、利便性など)であれば、競合他社よりも優位に立つことができます。また、価格では他社よりも高くても、技術や製品の品質にこだわることで、アメリカ市場での信頼性を高めることもできます。

技術開発とイノベーションの推進
アメリカ市場に進出するためには、技術開発とイノベーションの推進が必要です。アメリカ市場は、革新的な技術やサービスが求められる市場であるため、日本企業も現地での研究開発や新しいビジネスモデルの導入など、積極的な取り組みが求められます。

技術革新による差別化
アメリカ市場では、革新的な製品やサービスが高く評価されます。日本企業は、新しい技術やアイデアを導入し、市場に先駆けて新製品やサービスを提供することによって、競争優位性を確保することができます。

地域特化戦略
アメリカの中でも各州・地域に合わせたマーケティングや商品開発を行うことで、現地の顧客により魅力的な商品やサービスを提供することができます。

サプライチェーンの最適化
アメリカ市場に進出する場合、現地でのサプライチェーンの最適化が必要です。現地での生産、物流、販売網の確立など、日本とは異なる環境下でビジネスを行うための最適化が求められます。

品質とコスト競争力の向上
アメリカ市場では、品質とコスト競争力が非常に重要です。日本企業ならではの高品質な製品を提供し、生産効率を改善することによってコストを徹底的に引き下げましょう。このように、品質とコスト競争力を強化することで、競争優位性を確保することができます。

日本企業がアメリカ市場に合わせた製品を供給した例

トヨタ自動車:トヨタ・プリウス
トヨタ自動車は、アメリカ市場においてハイブリッドカーの先駆けとなり、成功を収めました。2000年にはトヨタ・プリウスをアメリカで発売し、高い燃費性能と環境性能が注目され、多くのアメリカ人に愛用されるようになりました。

ソニー:エンターテインメント関連事業
ソニーは、アメリカ市場においてテレビやオーディオ機器、カメラなどのエレクトロニクス製品を提供して成功を収めました。また、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントを通じて、アメリカの映画産業にも進出し、多くのヒット作を生み出しました。

パナソニック:EVバッテリー
パナソニックは、アメリカ市場において家電製品やバッテリー、太陽電池などの環境技術を提供しています。特に、電気自動車用のバッテリーに注力し、アメリカ市場において高いシェアを獲得しました。

富士フイルム:医療機器
富士フイルムは、アメリカ市場において高品質な写真フィルムやカメラを提供して成功を収めました。また、医療用画像診断機器などの医療機器分野にも進出し、アメリカ市場において高い評価を得ています。

ユニクロ:高品質・高機能ファストファッション
ユニクロは、アメリカ市場においてファストファッションを提供し、急速な成長を遂げています。特に、ユニクロの高品質な製品とリーズナブルな価格は、アメリカの若い世代に支持されています。

アメリカ現地企業とパートナーシップ構築

アメリカ市場に進出する場合、現地企業とパートナーシップを結ぶ方法があります。現地のビジネスパートナーは、地元の市場についてのノウハウを持っており、ビジネスネットワークを築いています。そのため、現地のパートナー企業と戦略的なパートナーシップを構築することが、アメリカ市場での成功につながる可能性があります。

技術力の共有
日本企業が持つ技術力を現地のパートナーや顧客と共有することで、現地でのビジネス拡大を促進することができます。

非競合的なパートナーシップの構築
アメリカ市場に進出するためには、現地企業やパートナー企業とのパートナーシップの構築が必要です。現地企業との提携や合弁事業など、日本企業と現地企業が協力し合うことで、市場参入の障壁を下げることができます。

M&Aや戦略的提携の活用
アメリカ市場に進出するには、M&Aや戦略的提携など、既存の米国企業との協力関係を構築することも効果的です。これにより、既存の顧客ベースや販売チャネルを活用し、市場参入をスムーズにすることができます。

日本企業のアメリカ市場でのパートナーシップ戦略事例

ソフトバンクとスプリント
ソフトバンクは、2013年にアメリカの第3位の携帯電話事業者であるスプリントを買収し、アメリカ市場に進出しました。この買収により、ソフトバンクはアメリカ市場において強力なパートナーを得ることができ、スプリントもソフトバンクの資金力や技術力を活用することができました。

ホンダとゼネラルモーターズ
ホンダは、1984年にアメリカの自動車メーカーであるゼネラルモーターズと提携し、合弁会社であるNUMMI(New United Motor Manufacturing, Inc.)を設立しました。NUMMIは、アメリカ市場においてホンダとゼネラルモーターズの技術を結集した自動車を製造し、成功を収めました。

ソニーとエリックソン
ソニーは、2001年にスウェーデンの電話機メーカーであるエリクソンと合弁会社を設立し、携帯電話などの通信機器事業に進出しました。この合弁会社により、ソニーはアメリカ市場においてエリクソンのブランド力を活用し、高品質な通信機器を提供することができました。

日本郵政とアマゾン
日本郵政は、2016年にアメリカのEC企業であるアマゾンと業務提携を結びました。この提携により、アマゾンは日本郵政の物流ネットワークを活用し、日本市場における配送サービスを改善することができました。また、日本郵政もアマゾンとの提携により、アメリカ市場における物流ビジネスに進出することができました。

株式会社アイエスエフ (ISF)とアンダーアーマー
ISFは、アメリカに拠点を置くスポーツ用品メーカー「アンダーアーマー」と提携し、日本のアマチュア野球選手向けに専用のグローブを販売するマーケティング戦略を成功させました。この戦略は、アメリカのメジャーリーガーであるダスティン・ペドロイアの支援を受け、その製品は日本の野球市場で高い評価を受けました。

マーケティング戦略の構築

マーケティング戦略の構築
アメリカ市場に進出するにあたり、現地のマーケティング戦略を構築しましょう。アメリカ市場は、日本とは異なる文化や消費者の嗜好があるため、それに合わせた広告や販促活動、商品のブランディングが必要です。BtoBであればリンクトイン、BtoCであればインターネット広告やソーシャルメディアを活用するなど、ターゲットのタッチポイントを想定し、自社の商品やサービスをユーザーにアピールしましょう。言語の違い(英語・スペイン語)や多民族国家であることにも配慮が必要です。

ブランド価値の向上
アメリカ市場ではブランド価値が高い企業(Familiarity)が優位に立ちます。日本企業が持つ技術力や品質の高さをアピールしながら、アメリカ市場でのブランド価値を向上させましょう。そのためには、広告やソーシャルメディア、マーケティングに力を入れ、ユーザーに対しアピールすることが大切です。2023年現在、B2B、B2C、D2C、どのようなビジネス形態でも、オンラインプレゼンスは必須です。現地の言語に対応したウェブサイトを整備し、国境を超えたプレゼンテーションに活用しましょう。

日本企業のアメリカ市場でのマーケティング戦略事例

株式会社ワイモバイル(現・ソフトバンク)
アメリカの携帯電話市場に参入するため、日本国内でも展開していた「ワイモバイル」ブランドを活用しました。アメリカ市場向けには、オンラインでの販売に特化した低価格帯のプランを提供し、若年層を中心に人気を博しました。また、オリジナルのCMを制作し、ソーシャルメディアなどで積極的に展開することで、知名度を高めました。さらに、複数の大手小売業者と提携し、店頭での販売も行いました。これらの戦略により、ワイモバイルはアメリカ市場でのシェアを伸ばし、成功を収めました。

サントリー「HIBIKI」ウイスキー
サントリーは、日本の伝統的な技術を活かした高品質のウイスキー「HIBIKI」をアメリカ市場に導入しました。サントリーは、高級感のあるデザインと、日本の伝統文化に根ざしたマーケティング戦略を採用し、アメリカ市場での人気を得ることに成功しました。

ユニクロ
アメリカ市場に進出する前に、ユニクロは市場調査を行い、アメリカ市場における競合他社の価格を比較、高品質・高機能の商品を競争力のある低価格で提供することを決定しました。アメリカの気候や消費者の好みに合わせて製品をカスタマイズし、さらにSNSやインフルエンサーマーケティングを通じて、若い消費者に訴求するマーケティング戦略を採用しました。またユニクロの成功の裏には、緻密に設計されたコンセプト(コミュニケーション)の一貫性があります。店舗の内装やロゴ、広告など、全てにおいてユニクロらしいデザインが統一されており、消費者に強い印象を与え、シンプルで洗練されたデザインの衣服を低価格で提供することで、アメリカの消費者に広く受け入れられました。

株式会社JINS
JINSは、アメリカ市場に参入する際に、オンライン広告を活用したマーケティング戦略を採用しました。特に、Facebook広告を活用することで、若年層を中心に大きな反響を得ることに成功しました。その後、ニューヨークに実店舗を出店するなど、アメリカ市場での事業拡大を進めています。

株式会社トレファク
トレファクは、アメリカのブランド品市場に参入する際に、独自のECサイト「BEECRAZY」を立ち上げました。このサイトは、日本の有名ブランド品をアメリカ市場に向けて販売するもので、多言語対応や配送サービスの充実など、アメリカ市場に合わせたサービスを提供することで、高い評価を得ています。

ローカライズ化

上記でも触れましたが、ターゲットや消費行動の違いを認識した上で、自社製品・サービスを現地仕様にするべきかどうかを検討しましょう。日本の企業が進出国ごとに製品・サービスをローカライズするには、現地のことを理解した現地人材を活用することが有効です。

注意点として、決して任せっきりにしない、言っていることを鵜呑みにしない、常に注意を払っておく必要があります。定期的にコミュニケーションをとるように心がけ、目標やKPIを共有し、こまめに損益計算書をチェックしましょう。

現地市場における理解度の向上
現地人材を採用することで、現地市場における文化やビジネス習慣についての理解度が高まります。これにより、現地の顧客ニーズやトレンドに合わせた商品やサービスを提供することができます。

現地のネットワークの構築
現地人材を採用することで、現地のネットワークを構築することができます。現地のネットワークを活用することで、顧客やビジネスパートナーとのコミュニケーションがスムーズになり、ビジネス拡大を促進することができます。

現地の市場ニーズに合わせた製品開発
現地人材は現地市場におけるニーズやトレンドに精通しているため、現地での製品開発において重要な役割を果たします。現地の顧客ニーズに合わせた製品開発を行うことで、新規市場の開拓を有利に進めることができます。

販売戦略の改善
現地人材が現地市場における販売戦略についての知識を持っているため、販売戦略の改善において重要な役割を果たします。現地人材が提案した販売戦略を採用・改善することで、現地の顧客獲得やビジネス拡大につなげることができます。

現地の課題解決
現地人材が現地におけるビジネス課題や問題点を理解しているため、現地の課題解決において重要な役割を果たします。現地人材が現地の課題を解決することで、現地でのビジネスをよりスムーズに進めることができます。

日本企業のアメリカ市場でのローカライズ化事例

トヨタ自動車:ジム・レンツ(James E. Lentz)
トヨタ自動車は、2005年に現地CEOであるジム・レンツを採用し、トヨタのアメリカ市場での成功を支援しました。レンツは、トヨタがアメリカ市場で抱えていた問題を解決するために尽力し、トヨタがアメリカ市場での信頼性と品質を改善することに成功しました。

ソニー:マイケル・バーカー(Michael Barker)
ソニーはアメリカのエンターテインメント産業に参入するために、1995年にアメリカ人のマイケル・イーガンをCEOとして採用しました。イーガンは、ハリウッドのシステムに精通しており、ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントを成功に導きました。

キヤノンUSA:ジョー・アダチ(Joe Adachi)
キヤノンUSAの現地CEOとして知られるのが、ジョー・アダチ氏です。彼は2008年に就任し、キヤノンUSAのビジネスの多角化やデジタル化に成功しました。

パナソニック:ジョセフ・テイラー(Joseph Taylor)
パナソニックは、2012年にアメリカ人のジョセフ・テイラーをCEOとして採用しました。テイラーは、パナソニックの商品やブランドについてよく知っていましたが、アメリカの消費者市場に関する洞察力も持っていました。彼の尽力により、パナソニックはアメリカでのビジネスを強化し、成功を収めました。

ユニクロ:リー・ピーターソン(Lee Peterson)
ユニクロのアメリカ市場における現地CEO採用の成功例として、2014年に元J.C.ペニーの幹部であるリー・ピーターソン氏がユニクロUSAのCEOに就任したことが挙げられます。彼の経験と人脈を活かし、ユニクロのアメリカ市場での知名度向上や店舗拡大に成功しました。

リコー:マーティン・ブロディガン(Martin Brodigan)
日本のオフィス機器メーカーであるリコーは、2016年に、米国市場における成長を加速させるために、現地の米国人CEOであるマーティン・ブロディガン氏を任命しました。彼は、リコーの米国市場における戦略の見直しや新製品の導入など、大胆かつ成功した取り組みを実施しました。

セイコーエプソン:キース・クルーガー(Keith Kratzberg)
セイコーエプソンは、2016年にキース・クルーガー氏をCEOに任命しました。クルーガー氏は、アメリカのビジネス界で20年以上の経験を持ち、以前はグローバル・ビジネス・ユニットのトップとして、アメリカのテクノロジー企業Lexmark Internationalを率いていました。彼は、セイコーエプソンのアメリカ事業の立ち上げと成長に貢献しました。

アメリカ進出のご相談は、ミシガン州経済開発公社へ

ミシガン州経済開発会社では、アメリカ・ミシガン州へ進出される企業様に下記サポートプログラムをご用意しております。
・ミシガン州ビジネス発展プログラム
・「経済のガーデニング」プログラム
・GOOD JOBS FOR MICHIGAN
・ミシガン州インセンティブプログラム

アメリカ進出を検討されている企業向けに様々なサービスをご用意しています。コンサルティングだけではなく、事業所・工場予定地の紹介、現地視察のアテンド、従業員採用サポートなどを無料でご提供します。

アメリカ進出のサポートにご興味のある方は、こちらからお問い合わせください。

海外展開・アメリカ進出に関するあらゆる疑問を解決

アメリカ進出について無料相談・支援

アメリカ進出について
無料相談・支援

20年以上の北米セールス及びマネージメント経験を持つスタッフが、日米双方で無料コンサルティング。検討以前にアメリカでの事業展開の可能性について詳しく知りたい企業様、また具体的にアメリカ進出の実現に向けて動き出している企業様まで、御社の状況を親身に伺い、あらゆるご相談にお答え致します。