【2022年アメリカ進出を考える中小企業必見】海外進出で失敗した事例から学ぶ対策

日本に本社を置く企業で、今後の国内外の経済成長予測・長期的な観点から、販路の拡大に向けて、海外への進出を検討する企業は増えています。日本国内で培った技術・経験は、海外でも十分競争力があります。グローバル化が進み、大企業の海外進出に合わせて同行進出するだけでなく、独自に海外マーケットを開拓することも可能になりました。マーケットの拡大だけでなく、日本に比べて比較的安い人件費・材料費を活用し、長期的戦略でコスト削減を図る進出意図もあります。

しかし、慣れない国外でのビジネスでは、海外へ進出しても、予想外のトラブルや準備不足などにより、残念ながら断念する企業の例も少なからずあります。そこで今回のブログでは、過去の海外進出企業の失敗事例を元に、どのようにすれば成功率を高められるか、その対策を検討してみます。

1. 意思決定を早くする

企業の次なる飛躍のきっかけとして期待をかける海外進出では、事前の想定通りに事が進むこともあれば、引き際を誤り、損失が膨らむ可能性もあります。言葉で成功や失敗と言うのは簡単ですが、実際には明確な基準などはなく、その判断は経営者自身が下すことになります。そのため、ビジネスプラン(ダウンサイドケース、ベースケース、アップサイドケースの3パターン)や短期・中期・長期の収支予測(売上、変動費、固定費など)をある程度事前に見積もっておくことをお勧めします。計画と現実を比較することで、積極的に次の手を打つのか、時間をかけて育てるのか、または撤退するのか、判断の基準を持つ事ができ、意思決定の材料となります。

「予期せぬ災害でダメージを受けたが、海外事業を継続すべきか判断が付かない」「思っていたよりも撤退に時間がかかって、損失が増えた」など、このようなケースは稀ではありません。そのため、①海外進出で達成したいことを明確にし、②撤退プランを準備しておくことで、状況の把握や次のステップへの判断がしやすくなります。

①海外進出で達成したいことを明確にする

海外進出の目的は何か、またそこへ到達するまでのプロセスやマイルストーンを事前に設定しておきましょう。決定権のある日本本社にその都度報告していたり、受動的に検討を開始し、承認までに時間をかけていると、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。慎重さはもちろん大切ですが、商談の度に持って帰って検討していると、相手への心象も良くはありませんし、信頼や機会損失にも繋がってしまいます。そのため、達成したい目標を明確にし、現地に滞在する社員と共有し、ある程度の権限と責任を与え、意思決定のスピードを速めましょう。

②撤退プランの準備

ビジネスの世界では、いくら用意周到に準備していたとしても、収支計画通りに事が進まない可能性は十分あります。日本を代表するグローバルカンパニー、ソニーやユニクロでさえ、海外進出で失敗を経験しているのです。商習慣や文化の違い、現地人材の採用ミス、企業理念の不浸透、競合調査・マーケティング調査不足など、外部要因だけでなく、内部要因が失敗の引き金になるケースがあります。

だからこそ、ワーストケースシナリオを予め想定しておき、引き際を知っておくことは、全く消極的なことではありません。損失を最小限に抑えることは、海外市場での経験として自信となり、次回の海外進出挑戦を後押しすることにもなります。失敗も想定して物事を進め、長期的な視点で成功を目指すことが大切です。

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2. 経営理念を大切にする

企業としての考え方・アイデンティティを確立しておくことは、海外展開の際にとても役立ちます。海外進出の失敗事例として、進出国の文化に合わせてローカライゼーションを重視した結果、失敗してしまったケースがあります。現地の業界について精通した人材を社長として迎え入れたことにより、フラットな社風から一転、上下関係のある社風に変貌してしまったそうです。進出国の業界では一般的なことが、企業の文化と摩擦を生むことがあるという一例です。

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企業文化を海外でも浸透させるには、必ずしもトップが日本人である必要はありません。国籍が違っても経営理念を尊重し、共有できる人材を採用することが大切です。また、経営理念を既に理解している人材を日本から送り、現場の指導・教育に指揮を取ってもらうことも重要です。

3. リサーチを欠かさない

海外進出で失敗しないためには、日本である程度の規模にまで企業を成長させた、ご自身の成功体験や自信・感覚に頼らないことです。日本での順調な経営、成功体験が、海外では仇となることがあります。

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とはいえ、情報収拾のために高いコンサルタント料を準備する必要はありません。現在では、検索すればある程度のことは分かります。面倒に感じるかもしれませんが、忙しいお仕事の合間を見て、些細なことでも興味を持ってリサーチしてみてください。また分からないことがあれば、ぜひミシガン州経済開発公社にお問い合わせください。こちらでは、アメリカ進出について検討されている企業様のご相談を無料で承っております。

①税制

現地の法令を遵守することはもちろんですが、知らなかったでは済まないのが海外ビジネスです。例えば、アメリカでは21%の連邦法人税(2022年4月現在)のほかに州法人税もかかります。また州法人税は、州によって割合が違い、アイオワ州では12%(法人税が高い州ですが、条件によって連邦法人税50%控除可能)、ミシガン州では6%となっています。また、州法人税がない州は代わりに固定資産税や売上税を課している場合もあります。業種・産業によって税率を変更している州もあります。

このようにアメリカ国内でも、州単位で課せられる税金が変わり、同時に進出時に利用可能なベネフィットやサポートも違ってきます。これから事業を行う予定の州や地域の法律について、自身で調べることは大変難しいかと思います。ミシガン州経済開発公社では、現地の法律に精通した専門家の紹介も可能です。

参考: 会計相談室 CPAオフィスFYI – アメリカ州法人税がない州とは?全米50州税一覧と仕組みも併せて解説

②文化

日本でのビジネスを海外で展開するには、プロダクトやサービスの内容それぞれの現地の言葉に翻訳すればできる。そう思われがちです。しかし、実際には言語、宗教、地域ごとのライフスタイルなどの違いによって、日本でのヒット商品がそのまま海外で受け入れられるとはいきません。

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海外法人設立に目を向けてみましょう。社員の雇用形態、採用方法、雇用後の教育や福利厚生など、国によって大きく異なります。ある日系企業では、景気低迷により工場を売却し、現地企業に引き継ぐ際に雇用者がストライキを起こし、多額の補償金を支払う結果となりました。「大企業だから多額の補償金をもらえるだろう」という考えから起きたストライキであり、実際には支払う必要はなかったそうです。

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商習慣や国民性の違いから、日本ではあり得ないようなことが、海外では起こることがあります。現場のリーダーとして期待していた現地社員が、条件の良い他社へ突然転職することもあります。全てを事態を避けることは難しいにしても、できるだけ現地に住む人のリアルな話を聞いておくことは、心の準備となります。

③競合

進出する国や地域には、ほぼ必ずその業界で大きなシェアを獲得している企業が存在します。例え日本で認知度が高く、トップ5のマーケットシェアを占めているような企業でも、海外進出の際には、創業当時のように初心に返り、また一からのスタートと考えた方が良いと思います。また進出先の競合には、現地の同業社だけでなく、他国の同業社も存在します。現地の需要やビジネスとして成り立つ価格帯かどうかにも注意を払う必要があります。そのため、画期的な新商品や新サービスでない限り、海外市場では一層厳しい競争が待っていると思っていた方がいいでしょう。それでも、人口が増加傾向にある国や地域では、需要・消費も拡大していくため、競合を前向きに受け止め、自社製品・サービスの販路拡大に努めてください。

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④企業パートナー

過去の海外進出で、現地政府から紹介された現地企業と合弁会社を設立して失敗したケースがあります。現地企業の社長のプレゼンテーション、市場規模や競合との優位性などを信じきってしまい、ダブルチェックを怠ってしまったことが原因でした。実際には、想定ほど受注が伸びず、在庫管理も煩雑で返品が相次ぎ、現地市場から撤退する結果となりました。

進出形態に限らず、販売先の確保や提携先・アドバイザーの確保は、海外ビジネスの成否を分ける重要なポイントです。海外進出の際には、一社のみの情報に頼らず、複数社から情報を集めましょう。合弁企業を選ぶ際も、複数の企業から話を聞き、経営状況や実績などを自社でも調べることをお勧めします。

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⑤収支予測を立てる

「収支計画など立てても、その通りには進まないのでは?」とおっしゃる方がいらっしゃいます。確かにビジネスの世界では、実際にやってみなければ分からないことは多々あります。それでも海外進出の際には、事前にロードマップを描いておくことをお勧めします。思い通りには進まなくても、短いスパンでその都度原因を探り、すぐに対応・修正することが重要です。そのための体制として、海外市場では現地をよく理解しているローカルの人材に任せることも一案ですが、同時に責任の所在を明確にすることで、対応・軌道修正がしやすくなります。

「いくら考えても見えてこないが、どうしても日本市場だけでは不安だから、海外市場にも挑戦したいが、大きな投資はできない」という方は、セールレップ、ディストリビューター(販売店)を利用することで、日本から海外取引を行うことが可能です。小さく進出し、リスクを抑えて、自社製品・サービスの現地ニーズを探る方法として利用する企業が多いです。

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4. 予想外の事態や失敗は必ず起こる

過去の失敗事例を見聞きし、同じミスを繰り返さないよう気を付けることはできますが、それでも必ず失敗しないという保証はありません。2020年から世界に広がり、大流行しているパンデミックのように、誰もが予測できない状況も起こり得ます。

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日本企業が海外進出で失敗したケースには、以下のような状況もありました:
・思っていた以上に人材を確保できない
・デモや戦争が起こった
・政治・社会情勢が不安定になり、経済状況が悪化した

いくら慎重に計画しても、コントロールできない外部要因はあります。だからと言って、海外進出を諦める必要もありません。今後、日本国内の人口減少やマーケット縮小は避けられません。だからこそ、「予想外のことが起きる」という危機感を持って計画を立てましょう。外部要件に関係なくできることは、日本本社のビジネス基盤を強固なものにしておくことです。その基盤の上に、海外ビジネスという第二・第三の柱を築きましょう。最初は全体の利益率の中で数%の割合かもしれませんが、一度軌道に乗り、手応えを掴むと、次々と広がっていく可能性が海外市場にはあるのです。

参考資料:中小企業庁 第 4章 海外展開 ―成功と失敗の要因を探る―

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