【アメリカ進出101】ビジネスパートナーの選び方と活用法
2021年アメリカでは、M&A(Mergers and Acquisitions)活動が活発に行われました。これは、アメリカがコロナ禍で低金利政策だったことや、その中で企業が保有する十分な現金準備金、及び企業が提供するサービスを拡大し、収益源を多様化したいという要因が組み合わさり引き起こされました。2021年の注目すべきM&Aディールには次のようなものがあります。
- MicrosoftによるNuance Communications(会話型 AI とクラウドベースのヘルスケア ソリューションのプロバイダー)の197億ドルで買収
- Aon(大手保険仲介業者)によるWillis Towers Watson(企業向けのリスクマネージメントと、保険・再保険仲介などのサービスを提供)の300億ドルでの買収
- Salesforce(クラウドアプリケーション及びクラウドプラットフォームの提供)による Slack Technologies(業務用コミュニケーションツールプロバイダー)の277億ドルでの買収
- NVIDIA(ゲーム用ハイエンドPC、データセンター、自動車のインフォテインメント・システムなどGPU/画像処理半導体の設計)によるArm(半導体知的財産の大手プロバイダー)の400億ドルでの買収
- Square(金融サービスおよびデジタル決済企業) によるAfterpay(分割払いプランのプロバイダー)の290億ドルでの買収
歴史的に見ても活発だった2021年のM&A活動は、2022年の上半期も継続していたましたが、下半期には減速しました。先行きの不透明な国内要因と国外要因が、M&A活動に影響を与えたと考えられます。
アメリカ進出に関わらず、事業拡大や新規マーケットへ進出する際に全てを御社自身で行う必要はありません。大抵の場合は進出する国・産業や業種で、先行する企業があり、御社の強みと他社の強みが相乗効果を生むのであれば、協力関係を結ぶことも戦略の一つです。
過去のブログでも取り上げましたが、アメリカへの事業進出方法であれば、下記の様は進出形態があります。
- 直接投資:米国に現地法人を設立し、ビジネスを行う方法です。米国の法律やビジネス環境に詳しいアドバイザーの支援が必要となる場合があります。
- フランチャイズ:米国の既存のブランドやビジネスモデルを利用し、フランチャイズ契約を締結してビジネスを展開する方法です。フランチャイズ契約には、ロイヤルティー料や広告費用などの支払いが必要となります。
- ライセンス契約:自社が持つ技術や特許を米国の企業にライセンス契約として提供し、米国市場に参入する方法です。ライセンス契約には、ライセンス料が必要となる場合があります。
- 販売代理店契約:米国の代理店を通じて製品を販売する方法です。代理店には、販売手数料やマーケティング費用を支払う必要があります。
- ジョイントベンチャー:米国の企業と共同で事業を展開する方法です。資金や技術の提供など、お互いに利益を得られるように契約を締結します。
- 買収:米国の企業を買収し、その企業の事業を引き継ぐ方法です。既存のブランドやネットワークを取得できるため、急速に米国市場に参入することができます。
- アウトソーシング:米国の企業に業務を委託する方法です。アウトソーシング先が持つノウハウや技術を取得することができるため、米国市場に進出するための手段として有効です。
- オンライン販売:インターネットを通じて、米国市場に製品やサービスを提供する方法です。インターネット上での販売には、米国の法律や税制に対する理解が必要となります。
- アクセラレーター参加:米国のアクセラレーターに参加し、ビジネスを成長させる方法です。アクセラレーターには、資金調達やネットワーク構築などの支援が提供されます。
- ベンチャーキャピタル:米国のベンチャーキャピタルに投資を受け、ビジネスを展開する方法です。ベンチャーキャピタルからは、資金調達や経営支援などのサポートを受けることができます。
*これらの方法は、アメリカ進出にあたって考慮すべきポイントが異なりますので、事前によく検討する必要があります。また、現地のアドバイザーに相談することも大切です。
アメリカ進出、ビジネスパートナーの選び方
パートナー選定の前に
海外に進出するにあたって、まずSWOT分析を行ってください。
SWOT分析とは、企業や組織の内外の環境を分析する手法の一つで、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つの要素を分析することで、企業や組織の現状や将来の方向性を把握するためのフレームワークです。
具体的には、以下のように分析します。
Strengths(強み):企業や組織の強みや優位性を分析します。これには、商品やサービス、製品の品質や特徴、ブランドイメージ、技術力、人材、マーケティング力、経営資源などが含まれます。
Weaknesses(弱み):企業や組織の弱点や課題を分析します。これには、商品やサービス、製品の欠点、ブランドイメージの悪化、技術力や人材不足、資金不足、マーケティング力の不足などが含まれます。
Opportunities(機会):企業や組織が利用できる市場や業界の機会を分析します。これには、新しい市場や商品の需要の変化、競合他社の失敗、規制緩和などが含まれます。
Threats(脅威):企業や組織が直面する可能性のある課題やリスクを分析します。これには、競合他社の台頭、市場や業界の不況、規制の厳化などが含まれます。
下記ポイントを考慮しましょう。
- 仕入れ先
- 販売ネットワーク
- 流通
- 経理
- 管理システム
- 労務管理
- 政府機関とのつながり
SWOT分析は、企業や組織の戦略策定や事業計画の立案に役立ちます。強みや機会を最大限に活かし、弱みや脅威を克服するための戦略(パートナー選び)をすることが重要です。
また、どの部分を自社独自でできるか、パートナーと一緒にするか、またはパートナーにまかせるか、考える必要があります。そして、パートナーの形態を最終的に決めることとなります。他の選択としては、コンサルタントや専門家に設立初期は依頼し、後に内製化していくという選択もあります。
パートナーの信頼性
ビジネスパートナーの信頼性は非常に重要な問題です。アメリカ市場は複雑で変化が激しいため、常に市場動向を把握し、リスクマネジメントを徹底することが重要です。
レファレンスの確認:パートナーが以前に取引を行っていた企業や人物からのレファレンスを確認し、パートナーの信頼性や過去の取引実績を確認しましょう。
企業情報の確認:パートナーの企業情報を確認することが重要です。会社の規模や業績、経営陣の経歴などを調べることで、企業の信頼性を判断することができます。
取引条件の明確化:パートナーとの取引条件を明確にすることが大切です。契約書に明記された取引条件を確認することで、双方の責任や義務を明確にすることができます。
誠実さの確認:パートナーとのコミュニケーションの中で、誠実さや信頼性を確認することが重要です。パートナーが提供する情報や言動が矛盾していないか、正確な情報を提供しているかを確認することが必要です。
パートナーの専門知識
アメリカ市場に精通し、現地の法律や規制、ビジネス文化について深い知識を持ったパートナーを見つけることが成功の鍵となります。地域ごとに文化やビジネス環境が異なるため、ビジネスパートナーが地元の情報やネットワークを持っていることが重要です。
業界知識の確認:パートナーが所属する団体、業界について深い知識を持っているかどうかを確認することが重要です。現地の市場動向やトレンド、競合他社の情報などを把握しているかどうかを確認することが必要です。
法律・規制知識の確認:パートナーが現地の法律や規制について深い知識を持っているかどうかを確認することが重要です。アメリカは州ごとに異なる法律や規制が存在するため、現地の法律や規制に明るいパートナーを見つけることが必要です。
ビジネス文化の理解:アメリカのビジネス文化は日本と異なるため、現地のビジネスマナーやコミュニケーションスタイルについて深い知識を持ったパートナーを見つけることが重要です。
専門家のアドバイスの活用:現地の専門家やコンサルタントのアドバイスを活用することも重要です。アメリカ市場に精通している専門家のアドバイスを聞くことで、ビジネスパートナーの専門知識をより正確に評価することができます。
パートナーの経験
アメリカ市場でのビジネス経験が豊富なパートナーを選ぶことが望ましいです。経験があるパートナーは、アメリカ市場におけるビジネスのポイントやトレンドに精通しており、ビジネスの成功につながることが多いです。
アメリカ市場に関する経験:アメリカ市場は独自のビジネス文化やマーケティング戦略があり、それに適応できる経験を持ったパートナーを選ぶことが重要です。アメリカ市場でのビジネス経験を持ち、現地の市場動向やトレンドを理解しているパートナーを選ぶことが望ましいです。
業界に関する経験:パートナーが所属する業界に関する経験も重要です。業界内のネットワークや取引実績を持ち、現地の競合他社や市場の動向を把握しているパートナーを選ぶことが望ましいです。
ビジネス開発に関する経験:アメリカ市場でビジネスを展開するためには、ビジネス開発に関する経験が必要です。パートナーが、新規ビジネスの開発やマーケティング戦略の立案、販路開拓などに長けていることが望ましいです。
リスクマネジメントに関する経験:アメリカ市場は、ビジネスチャンスとともにリスクも大きく、ビジネスパートナーにはリスクマネジメントの経験が求められます。パートナーが、契約書や法的文書の作成、リスク評価、リスク回避策の提案などに熟知していることが望ましいです。
パートナーの人脈
適切な人脈を持つパートナーを選び、ビジネスチャンスを生かすための戦略的なネットワークを構築することが重要です。また、人脈の数よりも質を重視することで、信頼できるパートナーを見つけることができます。
ローカルな人脈を持つこと:アメリカ市場は、地域によってビジネスの特性が異なるため、地域に密着したビジネスパートナーを選ぶことが重要です。地元企業や関係者とのコネクションを持ち、現地のビジネス情報やトレンドを敏感にキャッチできるパートナーを選ぶことが望ましいです。
産業団体や商工会議所などの関連組織のネットワークを持つこと:アメリカでは、業界団体や商工会議所などの組織が力を持ち、ビジネス情報の収集や交流の場を提供しています。パートナーが、そのような組織に加入していることで、情報収集やビジネスチャンスの発見が容易になることがあります。
政府関係者や法律家などのコネクションを持つこと:アメリカのビジネスは、政府や法律の影響を受けることが多いため、政府関係者や法律家とのコネクションがあるパートナーを選ぶことが望ましいです。政府や法律の情報に精通し、ビジネス上の問題や課題について、助言や支援を提供できることが求められます。
企業によってビジネスパートナーに求めるものは異なるかと思います。下記の様な点も検討事項です。
目的に合ったパートナーを選ぶ:自社のビジネス目的に合ったパートナーを選ぶことが重要です。例えば、市場拡大を目的とする場合は、現地の販売チャネルを持つパートナーが適しています。
適切なリソースを持つパートナーを選ぶ:パートナーが必要なリソースを持っていることが重要です。例えば、技術的なノウハウ、資金、地域のネットワークなどが必要になる場合があります。
コミュニケーションがスムーズなパートナーを選ぶ:パートナーとのコミュニケーションがスムーズに進むことは、ビジネスの成功につながります。言語や文化の違いがある場合は、それに対応できるパートナーを選ぶ必要があります。
目的に応じた契約条件を設定する:パートナーとの契約条件を慎重に検討することが重要です。契約期間や役割、報酬、知的財産権などを明確に定義することで、ビジネスのリスクを最小限に抑えることができます。
パートナーの文化やバリューが合致しているかを確認する:パートナーの文化やバリューが自社と合致しているかを確認することで、長期的な関係を築くことができます。パートナーが持つビジネスや社会的な価値観に共感し、協力関係を築くことが大切です。
競合関係にある企業とパートナーシップを結ばない:競合関係にある企業とパートナーシップを結ぶことは、ビジネス上のリスクが高まるため避けるべきです。同じ市場で競合している企業とパートナーシップを結んだ場合、情報漏洩やビジネスの利益分配に関する問題が発生する可能性があります。
長期的な関係性を築けるパートナーを選ぶ:ビジネスを成功させるためには、長期的な関係性を築くことが大切です。パートナーとの長期的な協力関係を築けるかどうかを判断するために、相手企業の将来のビジョンや戦略、過去の実績などを調査することが必要です。
評価の仕方を明確にする:パートナーとの業務内容や成果の評価方法を明確に定義することで、パートナーシップを円滑に進めることができます。成果に応じた報酬や評価方法を定めることで、パートナーとの協力関係を強化することができます。
評価の定期的な実施:パートナーとの協力関係を継続的に評価することが大切です。定期的な評価を行い、課題や改善点を把握し、パートナーと協力して問題解決や改善に取り組むことが必要です。
アメリカ進出、ビジネスパートナーの活用方法
アメリカのビジネスパートナーを見つけることは、手段であり目的ではありません。期待していることを明確にし、分からないことは積極的に質問しましょう。
リソースの共有:ビジネスパートナーとリソースを共有することで、両社の強みを生かして製品やサービスの開発・提供を行うことができます。例えば、技術や人材、物流ネットワークなどのリソースを共有することで、製品の開発や販売において、より高い付加価値を提供することが可能となります。
マーケットの拡大:ビジネスパートナーと協力して、新たな市場に進出することで、ビジネスの拡大を図ることができます。パートナーが持つノウハウやネットワークを活用することで、現地の市場調査やマーケティング活動、販売チャネルの共有など、効率的に行うことができます。
コスト削減:ビジネスパートナーと協力して、調達や生産などのコストを削減することができます。例えば、生産ラインの共有や調達ネットワークの活用によって、原材料や部品の調達コストを削減することができます。
技術・知識の共有:ビジネスパートナーとの協力関係を通じて、相手企業が持つ技術や知識を取り込むことで、自社の技術力や知識を向上させることができます。このような共有は、製品やサービスの開発だけでなく、生産工程の改善や顧客サポートなど、様々な領域において役立ちます。
イノベーションの創出:ビジネスパートナーと協力して、新しいアイデアやビジネスモデルを創出することができます。異なる業界や分野の企業が協力することで、新たな製品やサービスの開発、新しいビジネスモデルの創出など、革新的な取り組みが生まれることがあります。
ブランド価値の向上:ビジネスパートナーと協力することで、相手企業が持つブランド価値を借りることができます。相手企業のブランドイメージや認知度を活かして、自社のブランド価値を高めることができます。
人材交流の促進:ビジネスパートナーとの協力関係を通じて、人材交流を促進することができます。異なる国や地域の企業と協力することで、相手企業の文化や価値観に触れ、グローバルなビジネスに必要なコミュニケーション能力やリーダーシップ力を向上させることができます。
新しいビジネスチャンスの発掘:ビジネスパートナーと協力することで、新しいビジネスチャンスを発掘することができます。相手企業の持つネットワークや市場情報を活用して、新しい製品やサービスの開発、新しいビジネスモデルの創出など、新たなビジネスチャンスを見つけることができます。
リスクの分散:ビジネスパートナーと協力することで、リスクを分散することができます。例えば、自社人材をアメリカへ派遣するには大変なコストと責任が伴うため、現地のビジネスパートナーとの協力が考えられます。また、生産ラインの共有や調達ネットワークの活用によって、自社が持つリスクを相手企業と共有することができます。
シェアードバリューの創出:ビジネスパートナーと協力することで、シェアードバリューを創出することができます。相手企業と協力することで、社会的価値の向上や持続可能なビジネスモデルの構築など、より高次元の価値創造に取り組むことができます。
アメリカ進出、ビジネスパートナーの探し方
ビジネスパートナーを探す方法は多岐にわたりますが、以下にいくつかの方法を挙げます。
ネットワークを活用する:ご自身が所属する業界のイベントやコミュニティに参加し、他の企業とネットワークを構築することができます。アクセラレーターやインキュベーターに参加することで、他のスタートアップ企業と出会い、ビジネスパートナーを見つけることもできます。また、LinkedInなどのビジネス系ソーシャルメディアを活用することも有効です。
代理店やコンサルティングファームを活用する:代理店やコンサルティングファームなどのサードパーティにビジネスパートナーの紹介を依頼することもできます。他の方法に比べて、高額となる可能性があります。また紹介される企業が、必ず期待通りの成果があげられるかの保証されていません。
ビジネスマッチングサービスを利用する:ビジネスマッチングサービスを利用することで、自社に適したビジネスパートナーを見つけることができます。経済産業省所管の独立行政法人、中小企業基盤整備機構が運営するジェグテックがそれにあたります。
海外展開支援機関を活用する:海外展開支援機関に相談することで、海外でのビジネスパートナーを見つけることができます。JETROや経済産業省、日本商工会議所、中小企業基盤整備機構などがそれにあたります。また、アメリカには、企業誘致に関する部門がある州も存在します。ミシガン州経済開発公社もその一つです。
リサーチを行う:インターネットやソーシャルメディアで、直接コンタクトがとれる時代です。自社が目指すビジネスパートナーの情報を収集し、直接アプローチする方法もあります。既にアメリカ進出している企業や、したことがある企業を調べて、そのプロセスを直接聞くこともできます。または、業界のトップ企業をリサーチし、自分たちの業界のトップ企業がどのようなビジネスパートナーを持っているかを調べて、それらの企業とのネットワークを構築することで、ビジネスパートナーを見つけることも可能です。国内外のビジネスディレクトリサイトを活用することもできます。Google検索を有効的に使いましょう。
海外のトレードショーに出展する:自社がターゲットとする海外市場で行われるトレードショーに出展することで、現地の企業と直接交流し、ビジネスパートナーを見つけることができます。アメリカは世界中から企業が進出し、また国土が広いため、頻繁に大規模なトレードショーが行われています。
参考:アメリカ進出の第一歩 – 見本市・展示会(トレードショー)の出展方法
地域のビジネス団体に参加する:自分たちが所在する地域のビジネス団体に参加することで、他の企業とのネットワークを構築し、ビジネスパートナーを見つけることができます。地方自治体、商工会議所、経済団体関連などたくさん存在します。
上記を参考にしていただき、御社の海外進出目的に適したパートナーを見つけてください。
アメリカ進出のご相談は、ミシガン州経済開発公社へ
ミシガン州経済開発会社では、アメリカ・ミシガン州へ進出される企業様に下記サポートプログラムをご用意しております。
・ミシガン州ビジネス発展プログラム
・「経済のガーデニング」プログラム
・GOOD JOBS FOR MICHIGAN
・ミシガン州インセンティブプログラム
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