【アメリカ進出の実現に向けて】アメリカと日本の起業に関する比較

アメリカでは、2022年から今年にかけて、テックインダストリーの大幅なの人員削減が続いています。アメリカのナショナルメディアCNBCのニュースによると、2022年は部門全体で合計97,000人以上の人員削減が行われました。2021 年に発表された約13,000人から、2022年には 649% 増加したと、Challenger, Gray & Christmas, Inc.のレポートから報じています。

CNBC: Tech jobs were hit the hardest by layoffs last year

2023年1月時点で、人員削減を行なった大手企業と規模は以下の通りです。

企業名 従業員数 人員削減数
Alphabet/Google 約135,000名 約12,000名
Microsoft 約221,000名 約11,000名
Amazon 約1,608,000名 約28,000名
Salesforce 約49,000名 約9,000名
HP 約58,000名 約4,000-6,000名
Cisco 約83,300名 約4,000名
Meta 約72,000名 約11,000名
Twitter 約7,500名 約3,700名
Shopify 約10,000名 約1,000名
IBM 約298,000名  約3,900名
SAP 約107,500名 約3,000名
DoorDash 約8,600名 約1,250名
Coinbase 約4,700名 約2,100名
Peloton 約8,662名 約4,000名

参考:Clunchbase: Tech Layoffs: U.S. Companies That Have Cut Jobs In 2022 and 2023
*従業員数は、Googleサーチ調べ。

2022年はQuiet Quittingという現象もあり、売り手市場だと思われましたが一転し、現在は買い手市場でもあるようです。見方を変えると、アメリカに進出される企業にとっては優秀な人材を採用するチャンスでもあります。

日本で事業を一定規模まで成長させた経営者様や、これから起業するにあたり日本を飛び越えてアメリカで起業を目指している方、また事情はどうあれアメリカでビジネスを行いたい方へ、今回はアメリカと日本の起業について比較・検証してみました。一般的に、アメリカは日本よりも起業しやすい環境と言われていますが、その理由は何でしょうか。

中国や東南アジア(インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムなど)と合わせて、ぜひアメリカを海外展開・進出国の候補地の一つとしてご検討いただければ幸いです。

アメリカと日本の起業比較

起業とはその字の意味する通り、「事業を起こす」ということですが、前提として「世の中に新しい価値を提供する」「既存のサービスや商品を画期的に進歩させる」「長年の課題点を新しいアプローチでクリアにする」など、社会に存在する様々な問題に対し、消費者、または企業へ課題に対するソリューションを提示することを指しています。

「全国新設法人動向」調査によると、2008年に約10万件だった法人企業開業数は、2021年には14万4,622社(前年比10.1%増、前年13万1,238社)となりました。2007年以降で初めて前年比の増加率が10%を超え、件数は2017年を抜いて過去最多を記録しています。法人の開業数増加の背景には、2006年に施行された「新会社法」があります。

それまでは有限会社で300万円、株式会社で1,000万円の最低資本金の金額が決められていました。しかし新会社法ではこれらの規定が撤廃され、1円の資本金から会社を設立することが可能になっています。

しかし、起業する人が増える一方で、年間で8,000件以上の法人が倒産や何らかの理由で廃業しています。また法人化していない個人事業主に至っては、起業後1年で37.7%が廃業、10年後まで残れるのはたった1割と言われています。起業自体が簡単になったとしても、事業を継続することは依然として厳しい状況ではありますが、それは日本だけでなく、どこの国でも言えることです。

アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出

アメリカと日本の起業比較

日本での起業について

実家が事業を行なっているような状況であれば、自営業や起業することについて教育を受ける機会もあるかもしれませんが、一般的に日本では、専門学校や大学へ進学し、在学中に就職活動をするのが当たり前、つまり企業に雇用されるのが普通であり、起業をするのが稀という風潮ではないかと思います。

アメリカでの大学進学は、主に人間形成の時期と捉えられています。大学では、将来、大学院や職業を通じてより高度な人材になるための「全人教育」、そんなにレベルの高い専門技術を要求されない「職業教育」という二つの役割があります。一般に「18歳になったら家を出て、寮生活をして親離れをするのが大学の役割」「大学で学ぶことは分析力と判断力と決断力」と言われています。才能溢れる人材は、在学中に起業することも珍しくありません。

一例
・マイクロソフト(1975年創業):ビル・ゲイツ(ハーバード大学中退)、ポール・アレン(ワシントン州立大学中退)
・アップル(1976年創業):スティーブ・ジョブズ(リード大学中退)、スティーヴン・ゲイリー・ウォズニアック(カリフォルニア大学バークレー校卒業)
・グーグル(1998年創業):ラリー・ペイジ(スタンフォード大学中退)、セルゲイ・ブリン(スタンフォード大学中退)
・フェイスブック(2004年創業):マーク・ザッカーバーグ(ハーバード大学中退)、エドゥアルド・サベリン(ハーバード大学卒業)

一般的に、アメリカが日本よりも起業しやすいと言われる理由の一つに、起業に対する文化や社会的風潮の違いがあります。それでは、日本の起業率が低い要因は何でしょうか。

日本の起業率が低いの要因
・極端な貧困や苦労を経験していない
・起業を意識する機会が少ない
・学校における起業家教育が十分でない
・身近に起業家のロールモデルがいない
・ノウハウや人脈の不足(メンター不足)
・再就職の困難さ(新卒採用制度や再就職の年齢制限)
・事業資金の借入等に個人保証や担保が必要
・事業に失敗した際の責任追及(基本的に無限責任 *自己破産は別)
・起業家に対する社会的評価

参考:中小企業庁-2017年版中小企業白書 概要

日本では、資本金が1円から会社設立ができる時代になり、起業のハードルは下がっているものの、会社設立にかかる費用は最低でも200万円程度は必要と言われています。さらに事業内容によっては、会社設立登記にかかる費用(約20〜25万)の他、オフィスや人件費、設備投資が必要となる場合もあります。

日本政策金融公庫の2021年度新規開業実態調査によると、個人が開業するにあたって用意する開業費用は500万円未満が約42%、開業費用の平均は941万円となっています。

参考:2021年新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所

株式会社設立の手続きに必要な諸費用
・収入印紙代:40,000円
・認証手数料:50,000円
・謄本手数料:2,000円
・登録免許税:150,000円〜
※収入印紙代は電子定款を作成する場合は無料
※登録免許税は15万円を下限として、資本金額×0.7%

合同会社設立の手続きに必要な諸費用
・収入印紙代:40,000円
・謄本手数料:2,000円
・登録免許税:60,000円〜
※収入印紙代電子定款を作成する場合は無料
※登録免許税は6万円を下限として、資本金額×0.7%

また、下記の支出も念頭に入れておく必要があります。
・在庫のストックコスト:事業内容により数万円〜数十万円
・筆記具や複合機、固定電話等の事務用品:数千円程度
・複合機や固定電話等:購入費数十万円
・リース料金:月額数万円
・人件費、継続雇用:時給、月給の設定により変動
・アウトソーシング:発注案件毎に発生
・広告関連: 広告費用:数万円〜数十万円程度
・ホームページ作成:外注20~30万円

参考: 第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来
Jetro: 日本での拠点設立方法 コスト試算ガイド
参考: 中小企業庁ー第3節 開廃業の状況

アメリカでの起業について

一方、アメリカの場合ですが、会社設立をする際の手続きや費用は、日本と大きな差はありませんが、オンラインで完結できることや州によって必要書類や費用が異なっているということは、合衆国であるアメリカらしさです。一例としてカリフォルニアでは、C-Corporation(一般的な株式会社)の登記にかかる費用は115ドル(日本円で1万円程度)です。トータルとしては、費用総額は約2,000ドル(約20万6,000円)、主なコストは以下の通りです。

・法人設立費用
・税務番号の取得費用
・ソーシャルセキュリティ番号の取得費用
・オフィス賃貸料
*銀行口座開設は、場合によっては時間がかかることがあります。また代行を依頼される場合は、開設手数料、銀行への月額手数料などが発生します。

アメリカで起業するメリット
・起業、スタートアップの本場
・世界中から優秀な人材が集まる
・市場が大きく、移民政策により長期的に成長が見込まれている
・先進国で法制度がしっかりしており、ビジネス環境が整っている
・日本に比べて、会社設立や管理費用が比較的抑えられる
・ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市以外では、生活費や会社経費は低い
・良くも悪くも契約社会であり、契約を理解し対策していればリスクを低減できる
・スモールビジネスへの支援や環境が整っている
・実力主義であり、性別や年齢などに関係なく、結果を出せば評価され、支援や顧客が得られやすい
・VC(ベンチャー・キャピタル)や、エンジェル投資家などからの投資が比較的容易に受けられる
・VCやエンジェル投資家がメンターとなり、経営のアドバイスを受けられる
・商品やサービスなどでクライアントの問題を解決すれば、スモールビジネスでも大企業と取引ができる
・アメリカでの事業展開後に、グローバル進出も視野に入れてビジネスを行える
・弁護士やコンサルタントなどの専門家や、先輩起業家の数が多いため、相談や支援を受けられやすい
・特定の地域に特定業種の会社や専門家などが集まっている(ITならシリコンバレーなど)ため、その地域で盛んな業種のビジネスで起業すれば、情報や人材などにおいて有利に事業を行える

「起業家や人材は群生する」という傾向があります。起業家の成功が、次の企業家を生み出す原動力になるという循環について、シリコンバレーはその証明の一つと言えますし、現在はニューヨーク、ボストン、フロリダ、フェニックス、ヒューストン、フィラデルフィア、ワシントンD.C.、ダラス、シカゴ、ロサンゼルス、サウス・バイ・サウス・ウェストで知られるオースティンなど、アメリカ全土に派生しています。

アメリカは日本に比べて起業が盛んに行われていることを示すデータとして、2021年度の日本の新設法人数は14万4,622社であったのに対し、同年のアメリカの新設法人件数は540万社で、その差は約37倍です(事業の成功率は別)。人口比を考慮しても、その差は歴然です。また経済動向でも、日本では今後の経済成長やGDPに対し2倍もの債務残高が不安視されている一方で、アメリカでは移民政策もあり、人口が増加傾向で経済成長が見込まれています。

BCG: アメリカの輸出急増の背景――アメリカの生産コストは先進国中最も低い水準に
Jetro: 2021年度 北米投資関連コスト比較調査(2022年3月)
財務省:日本の借金の状況

開業率・廃業率について

日本の開廃業率を、他の主要先進国と比較してみると、開業率は、最も高い英国で13%程度、アメリカで9%程度である一方、日本は4%程度と、これらの国の半数にも達しません。また、廃業率は、英国が11%程度、アメリカが8%程度と、開業率と同程度の廃業率となっている中で、日本の廃業率は1.5%程度と圧倒的に低いです。廃業率が低いことは良いと思われるかもしれませんが、事実として企業には寿命があります。新しい企業(またはサービス)が生まれなければ、経済活動の担い手である企業数は減少し、失業率も上昇し、国際的な競争力が低下します。また、企業だけでなく産業にも栄枯盛衰があります。起業率が低いことは、成長分野の担い手が不足することにつながります。

全ての起業がテクノロジー関連である必要はないのですが、例としてシリコンバレーのスタートアップ投資のパイオニア、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)でも、20社に投資し、数社がイーブン、1社がユニコーンになれば良しと言われるほど、成功率の低いスタートアップですが、その1社が19社の投資分を上回る価値を生み出し、アメリカ経済を加速させ、世の中を変えているのです。

起業率・廃業率が共に低いということが、日本の社会的な悪循環となっています。産業や企業の「新陳代謝」(スタートアップの現サービスに対するディストラプションなど)によって、成長力を高める必要があるのですが、日本はまだまだ現状維持の傾向が強いです。その結果を示すデータとして、世界のユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業、2020年6月時点)の数が、米国225社、中国121社、日本は3社のみとなっています。

アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出

ビジネスの始めやすさランキング

世界銀行ウェブサイトで、ビジネスのしやすさ環境ランキングが発表されています。比較項目には、電気等の基本インフラ(Getting electricity)、建設許可の取り扱い(Dealing with construction permits)、融資の受けやすさ(Dealing with construction permits)、少数派投資家の保護(Protecting minority investor)、税制(Paying taxes)、貿易(Trading across borders)、契約(Enforcing contracts)、破産の解決方法等(Resolving insolvency)あるのですが、その中にビジネスの始めやすさ(Starting a business)という項目があるのですが、日本は世界で106位となっています。

Country Starting a business Global Rank
New Zealand 1 1
Georgia 2 7
Canada 3 23
Singapore 4 2
Hong Kong SAR, China 5 3
Jamaica 6 71
Australia 7 14
Uzbekistan 8 69
Azerbaijan 9 34
Armenia 10 47
United Kingdom 18 8
China 27 31
Korea, Rep. 33 5
France 37 32
United States 55 6
Italy 98 58
Japan 106 29
Mexico 107 60
Germany 125 22
India 136 63
Brazil 138 124
South Africa 139 84
Indonesia 140 73

アメリカの方が開業しやすい(ビジネスの始めやすさ:55位)のはなぜでしょうか。アメリカと日本では、起業ステップや提出するドキュメントの数はそれほど違いはありません。それでも、アメリカの方が始めやすい理由として、①手続きが全てオンラインで完了できること、そして②書類ひとつひとつの内容が日本に比べて簡易であることが挙げられます。日本では、必ず法務局や税務署に行く必要があります*。そのため、書き間違え等不備があった際に、一から書き直す手間も発生します。

*2020年1月に「法人設立ワンストップサービス」が開始され、オンラインで行うことが可能になりました。
J-Net21: 起業マニュアル-株式会社の設立手続き

日本の起業プロセス
• 定款の作成・認証
• 会社の印章
• 出資金の払い込み
• 法務局へ登記申請(「株式会社設立登記申請書」「登録免許税の収入印紙貼付台紙」「定款」「設立時取締役の就任承諾書」「取締役の印鑑証明書」「払い込みを証する書面」「印鑑届書」)
• 年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険新規適用届」「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」「健康保険被扶養者(異動)届*」*家族を被扶養者にする場合
• 税務署へ「法人設立届出書」「給与支払事務所等の開設届出書」
• 本店を置く都道府県税事務所や市町村役場に「法人設立届出書」
• 金融機関の口座の開設手続き

アメリカの起業プロセス
• 定款の作成と登録
• 第一回取締役会の開催
• 雇用番号の取得
• ビジネスライセンスの取得
• State of Informationの申請(年次報告申請)
• 州雇用番号(EIN)の取得
• 銀行口座の開設
• 株式の発行
• BE-13またはBE-13書類提出免除の提出

参考:アメリカでの会社設立プロセス

ビジネス・エコシステム

アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出

ビジネスエコシステム(事業生態系)という言葉は1990年代に米国・シリコンバレーで生まれ、2000年代から日本でもよく聞かれるようになりました。昨今急激にユーザーの価値観の多様化やデジタル化が進んだことにより、デジタルコマースやデジタルヘルスケア、モビリティエコシステムなど、業種・業界を横断した新たなビジネスエコシステムが次々と生まれています。従来は同一業界内でビジネスエコシステムが形成されていましたが、昨今は業界内における差別化や顧客ニーズの充足が困難になり、各製品およびサービスを顧客目線でシームレスにつなぐ必要が強まっているため、業種・業界を横断したビジネスエコシステム形成が進んでいます。

スタートアップ・エコシステム

アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出
アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出

また、アメリカでの起業数が多い理由として、スタートアップエコシステムも構築されていて、教育プログラムやイベント、パートナーシップ制度、アクセラレータ(ビジネスの拡大が主題)、インキュべータ(革新的なアイデアを生み出すことが主題)、メンターが充実していることも要因です。

アメリカと日本の起業意識

上記でも触れましたが、日本の方が起業に対して消極的なことが分かっています。グローバル・アントルプレナーシップ・モニター(Global Entrepreneurship Monitor=GEM)では、主要な研究目的として、ベンチャー企業の成長プロセスを解明し、起業活動を活発にする 要因を理解し、その上で国家の経済成長や競争力、雇用などへの影響を定量的に測定しています。最終的には、国家経済の活性化につなげるための政策提言を目的としています。

アンケート項目の一つ、「起業するための知識・能力・経験を持っていますか?」の質問に対し、「ある」と回答した人達の指数を調べました。その結果、アメリカが65.6%、イギリスが47.5%なのに対し、日本はわずか14%という結果でした。

参考:グローバル・アントルプレナーシップ・モニター(Global Entrepreneurship Monitor)

GEMの重要な目的の一つに、各国の起業活動の水準を比較するための信頼できる指標を作成することがあります。各国の起業活動の活発さをあらわす指標として「総合起業活動指数(Total Early-Stage Entrepreneurial Activity: TEA)」という尺度を開発しました。この尺度は、「現在、1 人または複数で、何らかの自営業、物品の販売業、サービス業等を含む新しいビジネスをはじめようとしていますか」、「現在、1 人または複数で、雇用主のために通常の仕事の一環として、新しいビジネスや新しいベンチャーをはじめようとしていますか」、そして「現在、自営業、物品の販売業、サービス業等の会社のオーナーまたは共同経営者の1 人として経営に関与していますか」などの質問に基づき作成されています。

調査対象国の総合起業活動指数(以下、TEA)をみたものです。日本のTEAは5.4となっており、昨年の5.3とほぼ同じ、50カ国中、日本よりも低い国は、イタリア(2.8)パキスタン(3.7)の2か国のみという結果でした。

アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出
アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出
アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出

2020年に全世界に大きな影響を与えたコロナウィルスですが、その対策は各国様々。米国では、起業件数が「異次元」のペースで増加し、環境面の整備や政策効果もあり、新型コロナで大きく変化する経済や社会を見据えた新会社の設立が増えました。コロナ禍対策として成立した景気刺激策でも、給与保証プログラム(PPP)などスタートアップ企業が利用できる制度がありました。(PPPは2021年5月に受付終了)

不況はチャンスという定説を実行している良い例だと言えます。

参考: Reuters-〔クロスマーケット〕「異次元」の米起業増、コロナ後見据え 日米市場の差に

アメリカでの起業 ー 注意点

アメリカの文化面だけでなく、新しい環境という点でも挑戦することがたくさんあります。以下はアメリカで起業するなら覚えておきたい点をまとめました。

・文化の違いを認める

英語を覚え、アメリカ文化に身を置くことが起業に役立ちます。アメリカとの違いは、どちらかが優れて、劣っているわけではありません。それぞれの良さがあり、認めることが大切です。

・相談できる環境を作る

アメリカへ向かう前に、日本語で相談できそうな機関や人を探しましょう。できれば、共同創業者がいた方が良いです。スタートアップへの投資、起業家養成スクールとしても有名なYコンビネーターでも、共同創業者を推奨しています。辛い時期も助け合い、支え合うことができます。

・起業の目的を忘れない

起業することやお金が目的にならないよう、定期的に目的を見直してください。日本とアメリカで、起業スタイルは違うかもしれません。ただし、提供する商品やサービスの目的がはっきりしていれば、ターゲットオーディエンスも明確になり、結果マーケティング時に役立ちます。

・ターゲット顧客のニーズを理解する

商品やサービスの内容や仕様などにフォーカスするのではなく、ターゲットとする顧客のニーズを的確に理解することが大切です。

・競合分析

ライバル企業が商品やサービスをどの程度の価格で提供しているのか、どのような方法で顧客にアプローチしているのか、十分にリサーチを行いましょう。その上で、顧客に自社の商品やサービスを選んでもらうためには、どのように差別化を図るべきか綿密に戦略を練ることが大切です。

・市場分析の徹底

大企業に比べてリソースが限られるスタートアップ企業では、現在どのような人材が自社に存在していて、どのような人材が不足しているのかを的確に把握し、必要な人材を集めてチーム力を高めることが求められます。例:①3C分析(顧客:Customer、自社:Company、競合他社:Competitor) ②PEST分析(政治:Politics、経済:Economy、社会:Society、技術:Technology) ③SWOT分析(強味:Strength、弱み:Weakness、機会:Opportunity、脅威:Threat) ④5F分析(既存競争者同士の敵対関係、新規参入の脅威、代替品の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力)

・人材マネジメント

大企業に比べてリソースが限られるスタートアップ企業では、現在どのような人材が自社に存在していて、どのような人材が不足しているのかを的確に把握し、必要な人材を集めてチーム力を高めることが求められます。

・資金調達

資金不足による失敗を避けるためには、創業時に十分な資金を用意し、当面の間は収益が伸びないことを想定した上で余剰資金を残しておくことが重要なポイントです。助成金・補助金の利用、エンジェル投資家からの出資、ベンチャーキャピタルからの出資、日本政策金融公庫の融資の利用などがあります。

アメリカでの起業 ー Q&A

最後に、アメリカの起業に関するよくある質問を記述しておきます。ぜひ今後の参考にしてください。

アメリカで会社を作るメリットを教えてください
世界をリードする経済国家であるアメリカでビジネスを行い、成功させることは世界を舞台にビジネスをする上での第一歩と言えます。
・日本法人の設立よりも安く簡易
・資本金ゼロ、役員は1名から設立可能
・法人格であることによって信用が獲得できる
・法人格であることによりBtoB取引が可能
・会社維持費が日本に比べて安い
・比較的税金が安い
・自分の会社で自分のビザや永住権の取得のチャンスがある
・個人事業では受けられない税金の免除
・アメリカでのビジネス成功後の、海外展開を意識したビジネスが可能
・ブランドイメージの向上

日本在住者がアメリカで会社を設立できますか?
アメリカ各州では、役員が州内に居住していることを条件としていません。従って、役員全員が州外の居住者(外国居住者)でも会社を設立することが可能です。しかし、州内に事務所を設置しない場合、その州に実在する住所をもつ州商務長官に対する書類の代理人(レジスター・エージェント)を州内に設置することが必要です。レジスター・エージェントの設置によって、全ての役員が日本人であっても会社を設立することが可能になります。

アメリカの会社を設立するまでの期間を教えてください。
法律的には、定款を州政府へ申請し認可されれば会社設立 (法人設立) は完了となり、最短1日で可能ですが、アメリカの会社設立(法人設立)には、2ヶ月の所要期間を見ておいてください。

設立する州はどのように決めればよいのでしょうか。
事業や商品・サービス、取引先の立地など多くの条件が存在し、一概には言えません。アメリカ(米国)においては実際に事業を営む州と法人を設立する州が同一である必要はありません。基本的に、営業活動を行う州で設立します。例えば、Delawareで会社を設立し、New Yorkで営業活動(拠点)した場合は、DelawareとNew Yorkでの州税義務が発生します。しかし、日本での営業を主な目的としている場合は、もしくは何らかの理由で他州に設立したい場合、全米50州の中から選びます。

連邦会社番号(EIN)とは何ですか。
連邦の税務署にあたる内国歳入庁(Internal Revenue Service=IRS)へ申請し取得する納税者番号です。個人経営、法人、共同経営、その他の会社形態の税金申告用に割り当てられる9桁の番号で、アメリカでの会社ID番号のようなものです。銀行口座開設、保険の加入などの際に必ず必要となります。また、アメリカで活動をし、租税条約の恩恵を受けるために必要な番号となります。会社設立後は、必ず取得する必要があります。

ソーシャルセキュリティーナンバー(SSN)とは何ですか?
アメリカではソーシャルセキュリティーナンバー(SSN)という9桁の番号で個人の情報を政府が管理しています。この番号をもとに社会保障制度がすすめられており、税金を個人で申告する際などに必要な番号となります。アメリカでは近年、不法滞在者への取り締まりが厳しくなり、SSNの取得も困難なのが現状です。合法的に働けるビザを持たない限り、外国人にはSSNを発給していません。

アメリカで起業に失敗したらどうすればいいですか?
起業家の多くが失敗を経験しています。何回か失敗したとしても、事業を継続できることができるだけの資金的余裕のある事業計画・資金調達を行なってください。アメリカやシンガポールなどの海外では、何度失敗しても、一度成功すれば良い、という考えを持っています。失敗が経験になり、成功へ近づくからです。

アメリカで起業するには、どれぐらい英語が話せると良いですか?
ビジネス相手に直接英語で説明・交渉ができることが理想ですし、信頼関係を築くことに役立ちます。自信がなければ、現地で通訳を雇うことも可能です。ローカルならではの情報が得られるかもしれません。アメリカは移民によって建国された国であり、企業の規模に関わらず、相手に価値を示すことができれば、真剣に話を聞いてくれ、ビジネスが成立することは珍しくありません。英語については、話したいという意欲さえ継続すれば、アメリカでのビジネスを通じて徐々に慣れていくので、大きな問題はありません。

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