【アメリカ進出準備】アメリカの物流とサプライチェーン管理

物流とサプライチェーン管理は、現代のビジネスにおいて極めて重要な役割を果たしています。商品やサービスが生産者から消費者に届くまでのプロセスを効率的に管理することは、企業の競争力を高め、顧客満足度を向上させるために欠かせません。

アメリカは、広大な国土と輸出入を含む多様な経済活動を行なっているため、物流とサプライチェーン管理が極めて複雑かつ重要な国です。主要な物流ハブやインフラの発展、トラック、鉄道、航空、海運といった多様な輸送手段の組み合わせにより、世界最大級の市場を支えています。さらに、近年のeコマースの急成長は、物流とサプライチェーンの在り方に大きな変革をもたらしました。

本ブログでは、まずアメリカの物流の現状を概観し、最近よく聞く3PL(サードパーティー・ロジスティクス)について触れ、最後にサプライチェーン管理について紹介します。アメリカの物流とサプライチェーン管理の全体像を理解していただき、アメリカ進出の際の検討材料としていただければ幸いです。

2007年から2021年までの、アメリカでの倉庫・保管企業総数

アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出

アメリカの物流の現状

主要な物流ハブとインフラ

アメリカの物流システムは、その広大な国土と多様な経済活動に対応するため、複雑かつ高度に発展しています。主要な物流ハブとしては、ロサンゼルス、シカゴ、ニューヨーク、アトランタ、ダラスなどが挙げられます。これらの都市は、国内外の輸送ネットワークの中心地であり、陸上、航空、海上の各種輸送手段が効率的に連携しています。

ロサンゼルスとロングビーチの港湾は、アジアからの輸入品の主要な玄関口であり、アメリカ最大のコンテナ港です。シカゴは鉄道網の中心地として、東西を結ぶ重要な中継地点となっています。ニューヨーク・ニュージャージー港は、東海岸最大の海上輸送拠点であり、大西洋を越える貿易のハブです。

主要な物流ハブについてご紹介します。

ロサンゼルス(LA)

ロサンゼルス港:
ロサンゼルス港は、アメリカ最大のコンテナ港であり、特にアジアからの輸入品の主要な玄関口です。ロングビーチ港と合わせて、アメリカ西海岸の物流の中心地となっています。

国際貿易における役割:
ロサンゼルス港は、年間何百万ものコンテナを取り扱い、国際貿易の要所として機能しています。この港を通じて、大量の消費財や産業用資材がアメリカに流入し、国内各地へ配送されます。

シカゴ

シカゴの鉄道ネットワーク:
シカゴは、アメリカの鉄道輸送の中心地であり、東西を結ぶ重要な中継地点です。シカゴの鉄道ネットワークは、アメリカ全土に広がる鉄道システムのハブとして機能しています。

中西部における重要性:
シカゴは、アメリカ中西部の物流拠点としての重要性を持ち、大量の貨物がここを経由して国内外へ輸送されます。また、鉄道だけでなく、主要な高速道路網と空港もあり、多様な輸送手段が利用可能です。

ニューヨーク/ニュージャージー

ニューヨーク・ニュージャージー港湾局:
ニューヨーク・ニュージャージー港湾局は、東海岸最大の海上輸送拠点を運営しています。この港湾は、大西洋を越える貿易の主要なハブであり、多くのコンテナ貨物が取り扱われています。

大西洋岸における物流の拠点:
ニューヨーク・ニュージャージー港は、大西洋岸の物流拠点として機能し、ヨーロッパやその他の地域からの輸入品がここを経由してアメリカ国内に配送されます。また、ニューヨーク都市圏への迅速なアクセスも物流効率の向上に貢献しています。

アトランタ

アトランタの空港と道路網:
アトランタには、世界で最も忙しい空港の一つであるハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港があり、国内外への迅速な航空貨物輸送が可能です。さらに、主要な州間高速道路網が集まり、トラック輸送も盛んです。

南東部の物流ハブとしての位置付け:
アトランタは、アメリカ南東部の物流ハブとして重要な役割を果たしています。空路と陸路の結節点として、南東部全体への配送を効率的に行うことができます。

ダラス/フォートワース

ダラス/フォートワースの物流インフラ:
ダラス/フォートワース地域は、アメリカ南部の物流中心地として発展しています。ここには、多くの大規模な配送センターや倉庫が存在し、物流インフラが充実しています。

南部および中央アメリカへのアクセスの良さ:
ダラス/フォートワースは、南部および中央アメリカへのアクセスの良さが特徴です。主要な州間高速道路と鉄道網が集まり、国内外への輸送が効率的に行われています。また、ダラス・フォートワース国際空港は、貨物輸送の重要なハブとして機能し、国際物流の効率化に寄与しています。

ミシガン州も物流において重要な役割を果たしています。特にデトロイトは、アメリカとカナダを結ぶ主要な貿易ルート上に位置しており、国際物流の重要拠点です。デトロイト川を越えるアンバサダー橋やデトロイト・ウィンザー・トンネルは、北米で最も忙しい国際的な陸上貿易通路の一つであり、大量の貨物が行き交います。さらに、ミシガン州には自動車産業が集中しており、部品の供給と完成車の輸送が活発に行われています。

ミシガン州の物流インフラ

ミシガン州, デトロイト, ダウンタウン

デトロイト港:
デトロイト港は、五大湖とセントローレンス川を通じたカナダおよび国際貿易へのアクセスにおいて重要な役割を果たしています。港湾は、自動車産業を支えるための部品や原材料の輸送にも大いに活用されています。

五大湖を通じた貿易:
五大湖を利用した水運は、ミシガン州にとって重要な物流手段です。カナダとの国際貿易はもちろん、アメリカ内陸部への効率的な物流ルートとしても機能しています。五大湖経由の輸送は、大量貨物の低コスト輸送を可能にしています。

鉄道と道路網:
ミシガン州の物流インフラは、主要な高速道路網と鉄道網で支えられています。州間高速道路75号線や94号線は、州内外への迅速な輸送を可能にし、物流の効率化に貢献しています。これらの道路は、自動車部品や完成車の輸送においても重要な役割を果たしています。

主要空港:
デトロイト・メトロポリタン空港は、ミシガン州の主要な物流拠点として機能しています。空港は、国内外への迅速な貨物輸送を可能にし、特に高価値商品や緊急貨物の輸送において重要です。フェデックスやUPSの物流ネットワークの一部としても機能し、物流のスピードと効率を向上させています。

産業クラスターと物流の優位性:
ミシガン州は、自動車産業を中心とした産業クラスターが存在し、これが物流ネットワークの強みとなっています。デトロイトを中心とする自動車産業は、部品の供給から完成車の輸送まで、効率的な物流システムを構築しています。このクラスターは、関連企業やサプライヤーとの緊密な連携を可能にし、全体の物流効率を高めています。

主要な輸送手段

アメリカの物流には、トラック、鉄道、航空、海運の各種輸送手段が活用されています。

トラック輸送:
トラック輸送は、アメリカの物流の中心を担っています。柔軟性が高く、都市間の短距離輸送やラストマイルデリバリーにおいて特に重要です。州間高速道路網を活用し、全国規模で迅速な配送が可能です。ミシガン州でも、トラック輸送が自動車部品や完成車の輸送に大きく依存しています。

鉄道輸送:
鉄道輸送は、大量の貨物を効率的に長距離輸送する手段として重要です。特に石炭、農産物、工業製品などの大量輸送に適しており、コスト効率が高い点が魅力です。主要な鉄道会社は、広範なネットワークを持ち、東西を結ぶ幹線が多く存在します。ミシガン州の鉄道網も、州内外への効率的な貨物輸送に貢献しています。

航空輸送:
航空輸送は、高価値商品や緊急性の高い貨物の輸送に適しています。主要な空港には、メンフィス(フェデックスのハブ)、ルイビル(UPSのハブ)、ロサンゼルス、シカゴ、アトランタなどがあり、これらの空港は国内外への迅速な輸送を可能にしています。ミシガン州のデトロイト・メトロポリタン空港も、貨物輸送において重要な役割を果たしています。

海運:
海運は、国際貿易において欠かせない輸送手段です。コンテナ船を用いた大規模輸送が可能であり、コスト効率が高い点が特徴です。主要な港湾には、ロサンゼルス、ロングビーチ、ニューヨーク・ニュージャージー港、サバンナ港などがあります。ミシガン州の港湾も、五大湖を通じたカナダや他の州との貿易において重要です。

eコマースの台頭とその影響

近年、eコマースの急成長がアメリカの物流とサプライチェーンに大きな変革をもたらしました。アマゾンをはじめとする大手eコマース企業は、消費者の期待する迅速な配送に応えるため、物流インフラの大規模な投資と革新を進めています。

配送センターの増設、ロボティクスや自動化技術の導入、ラストマイルデリバリーの効率化などがその例です。これにより、商品のピッキングから発送までの時間が短縮され、消費者への迅速な配送が実現しています。また、データ分析やAIの活用により、需要予測と在庫管理が高度化し、効率的なサプライチェーンの運営が可能となっています。

ミシガン州でも、eコマースの台頭が物流に大きな影響を与えています。州内にはアマゾンのフルフィルメントセンターがいくつも設置されており、迅速な配送体制が整っています。これにより、消費者の利便性が飛躍的に向上しました。

このように、eコマースの台頭は、物流のスピードと効率を劇的に向上させ、消費者の利便性を飛躍的に高めました。一方で、物流業界はこれに対応するための投資と革新を求められています。アメリカの物流とサプライチェーンは、これからも進化を続けるでしょう。

3PLとは?

アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出

3PL(Third-Party Logistics)は、企業が自社の物流機能を外部の専門業者に委託することを指します。これにより、企業は物流の管理や運営に関する責任を外部パートナーに委ね、自社のコアビジネスに集中することができます。主な3PLのサービスには、貨物の保管・配送、輸送ルートの最適化、在庫管理、情報技術の利用などが含まれます。また、3PLプロバイダーは多くの場合、効率性の向上やコスト削減を目指して、物流プロセス全体の最適化に取り組みます。

物流の課題

物流業界はさまざまな課題に直面していますが、特に以下のような問題があります:

  • 複雑化した供給チェーン: グローバル化により、物流ネットワークが複雑化し、さまざまな地域や国の規制や文化に対応する必要があります。
  • コスト効率の追求: 物流コストは企業の大きな負担です。在庫管理、輸送コスト、配送効率の最適化が求められます。
  • 技術の進化と適用: データ分析、IoT、AIなどの技術の進展により、物流の可視性や予測能力が向上していますが、これらの技術を実際の物流プロセスにどう統合するかが課題です。

3PLの解決策

これらの課題に対して、3PLは以下のような解決策を提供します:

  • 専門的な物流管理: 3PLプロバイダーは物流業界での専門知識と経験を持ち、物流プロセスの改善や最適化を支援します。
  • リスクの管理と回避: 3PLはリスク管理の専門家であり、供給チェーンのリスクを低減するための戦略を立案し実行します。
  • コスト削減: 3PLは効率的なルート選定や在庫管理、効率的な配送ネットワークの構築により、物流コストの削減を支援します。
  • 技術の活用: 最新の技術を駆使して、物流の可視性やデータ駆動の意思決定を強化します。これにより、リアルタイムでの情報共有や効率的な運営が可能になります。

グローバルマーケットにおける3PLの役割

グローバルマーケットでは、企業が多国籍なサプライチェーンを管理するために3PLプロバイダーを利用します。国境を越えた物流の複雑性や文化の違いに対応するために、地域に特化した物流ネットワークを持つ3PLが重要です。さらに、国際的な貿易協定や規制の変化にも迅速に対応する能力が求められます。

アメリカマーケットにおける3PLの特徴

アメリカの物流市場では、3PLは特に広範な役割を果たしています。大国アメリカの国土の広さや多様な産業のニーズに対応するため、多くの企業が3PLプロバイダーのサービスを活用しています。特に、eコマースの成長により、ラストマイル配送の効率化が求められ、3PLはその実現に向けた重要な役割を果たしています。また、アメリカの主要な物流ハブである都市(例:ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、アトランタ、ダラス/フォートワースなど)に拠点を持つ3PLプロバイダーは、地域特有の物流課題に対応するための戦略的なパートナーとして活躍しています。

効率的なサプライチェーン管理の方法

サプライチェーンの可視性と透明性

サプライチェーンの可視性と透明性は、全体の流れを把握し、リアルタイムで情報を共有することで、迅速な意思決定と問題解決を可能にします。具体的には、先進的なデータ分析やIoT技術を活用し、供給チェーン全体のトレーサビリティを確保します。これにより、遅延や在庫の浪費を減らし、顧客満足度を向上させることができます。

コスト管理と最適化の重要性

サプライチェーンではコスト管理と最適化が不可欠です。費用対効果の高い輸送ルートの選定や、在庫の正確な予測と管理、効率的な倉庫運営が重要です。また、供給ネットワーク全体でのコスト削減策を迅速に実施することで、競争力を維持し、市場変動にも迅速に対応します。

テクノロジーの活用

現代のサプライチェーン管理において、テクノロジーは革新をもたらします。特に、IoTとAIの組み合わせは次のような点で大きな利益をもたらします:

  • IoT(モノのインターネット)とAI(人工知能)の活用方法: IoTセンサーによるリアルタイムの在庫管理とトラッキング、AIによるデータの分析と予測により、精度の高い需要予測や効率的なリードタイム管理が可能となります。
  • リアルタイム追跡システムとデータ分析: センサーデータとAIの統合により、迅速かつ正確な意思決定が可能となり、在庫の最適化や需要予測の精度向上が実現します。

倉庫管理

効率的な倉庫管理は、サプライチェーンの中心的な要素です。最新の技術を導入することで、効率性と正確性を高めることができます。

  • 自動化された倉庫システムの導入: ロボティクスや自動化されたピッキングシステムの導入により、作業効率を向上させます。
  • 効率的な在庫管理とスペース最適化: リアルタイムの在庫トラッキングシステムと予測分析により、在庫の適切な配置と最適なスペース利用を実現します。

輸送管理

サプライチェーンにおける輸送管理は、時間とコストの最適化に向けた重要な戦略です。

  • 最適な輸送手段の選定(陸、海、空): 貨物の種類や距離、納期に応じて最適な輸送モードを選択し、輸送コストを最小限に抑えます。
  • マルチモーダル輸送の利点: 複数の輸送手段を組み合わせることで、リスクの分散と効率の最大化を図ります。

サプライチェーンの柔軟性

現代の市場環境では、サプライチェーンの柔軟性が重要です。変動する需要や予期しない出来事に迅速に対応する能力が求められます。

  • リスク管理と対応策: 予測不可能なリスクに対応するための災害対策計画や、サプライチェーンのリスクの評価と軽減策の実施が重要です。
  • 需要の変動に対応するための柔軟なサプライチェーン設計: リアルタイムのデータ分析と迅速なリアクションにより、需要の変動に対応し、サプライチェーンの安定性を確保します。

サステナビリティの考慮

持続可能性は現代のサプライチェーン管理において不可欠な要素です。

  • 環境に優しい物流とサプライチェーンの取り組み: グリーンロジスティクスの実践、エネルギー効率の向上、廃棄物の削減など、地球環境への負荷を低減する取り組みが求められます。

ミシガン州の具体的な支援策

ミシガン州は物流企業の成長を支援するためにさまざまな取り組みを行っています。

  • 企業向けインセンティブプログラム: 物流企業に対する税制優遇や助成金、訓練プログラムの提供を通じて、投資促進と雇用創出を支援します。
  • ミシガン州政府および経済開発公社(MEDC)のサポート: 物流業界への専門的なアドバイスや資金調達の支援、地域経済の成長を促進するための戦略的パートナーシップを提供します。
  • 物流業界の発展のための戦略策定: ミシガン州は、物流業界の将来性を担う人材の育成、最新技術の導入、サプライチェーン全体の効率化などを目的とした戦略策定に取り組んでいます。

これらの取り組みにより、ミシガン州は物流業界の競争力強化と持続可能な発展を推進し、地域経済に貢献しています。

アメリカ・ミシガン州経済開発公社 アメリカ進出

U.S. DEPARTMENT OF TRANSPORTATION: The National MFN Map

まとめ

アメリカ市場への進出において、物流とサプライチェーン管理は成功の鍵となる重要な要素です。広大な国土、多様な消費層、高度な物流インフラを持つアメリカ市場では、効率的なサプライチェーン構築が競争力強化と顧客満足度向上のために不可欠となります。

本ブログでは、アメリカの物流の現状とサプライチェーン管理について紹介しました。

以下、重要なポイントをまとめます。

  • アメリカの物流システムは、主要な物流ハブ、多様な輸送手段、eコマースの台頭などの特徴を持つ。
  • サプライチェーン管理は、サプライチェーン全体を効率的に管理し、コスト削減、顧客満足度向上、リスク管理などを実現する。
  • アメリカ企業は、最新技術の活用、3PLプロバイダーの利用、サステナブルなサプライチェーンの実践など、様々な取り組みを通してサプライチェーン管理を強化している。

アメリカ進出を成功させるためには、自社の製品やサービスに合った最適な物流とサプライチェーン戦略を構築することが重要です。専門家やコンサルタントのアドバイスを活用しながら、市場調査を行い、綿密な計画を立ててください。ミシガン州には日本企業のアメリカ進出をサポートする体制が整っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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